旅裝
劇場公開日:1948年2月1日
解説
「結婚(1947)」「情炎(1947)」「二連銃の鬼」の細谷辰男の製作、脚本は「象を喰つた連中」「長屋紳士録」の池田忠雄(小津安二郎と協同)「処女は真珠の如く」の中村登が監督する。カメラは「長屋紳士録」「新婚リーグ戦」「二連銃の鬼」の厚田雄春が担当。配役は市川春代が久々に出演し、相手役は「長屋紳士録」「新婚リーグ戦」佐野周二「不死鳥」のニューフェイス佐田啓二「処女は真珠の如く」「若き日の血は燃えて」「シミキンの拳闘王」の幾野道子らが出ている。
1948年製作/日本
劇場公開日:1948年2月1日
ストーリー
都会の生活、ずるずると身を引きずり込んでしまう泥沼、杉井朋子はやっとの事その汚濁の中から逃れて来た。田舎の清澄な空気の中に生活の希望を求めて……。だが一体この田舎にたよって行くような人でもあるというのか。だれもいやしない。途方にくれる朋子の前に坂本善吉が現われた。彼は波止場に水揚げされた魚を、魚屋に運び込むトラックの運転手。彼の好意で、朋子は小料理屋の女中に住み込む。この店の板前新六がまたひどく親切者、おかみのおかつも亭主の重太も好人物だった。朋子は何か温い環境の中で、新しい希望の光が見える様な気がする。善吉の様な好もしい若者がもし自分の様な者に……フトそんなことを考える。希望の持てる話だろうか、心楽しい様な、さびしい様な……。ところが朋子の甘い空想を破って、この辺りの顔役で、ヤミ成金の戸山がその毒牙をのばして来た。戸山にたてつくと後がこわい。悪い様にやしねえぜ、とからめ手から重太とおかつは攻められて弱ってしまった、自分の身が可愛けりゃ、戸山のいうことを聞く以外に仕様がない、板前の新六は咄嗟に機転を利かした。「このひとにゃ、チャンと恋人がいるんですよ、坂本善吉でさあ」戸山は引ッ込むより仕方あるまい。しかし御本人の朋子と善吉の方が驚いてしまった。新六がハッキリいってしまったのだ「ほんとか?」と戸山は未練たらしく疑ぐってみる(ほんとうなんだ)善吉はそう思い込む、朋子も新六の言葉で急速に心が動いた。だがこの汚れた身体、ポッと燃え上ろうとする希望のほのおがスッと消えかかる。善吉が笑っていった。「二人で新しい生活を築いて行こう、昔のことなんか忘れてしまうんだ」朋子の眼に始めて輝かしい光がさした。