喜劇は終りぬ

劇場公開日:

解説

「ニコニコ大会 歌の花籠」に次ぐ大庭秀雄の演出作品である。

1946年製作/84分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1946年1月10日

ストーリー

大戦中、我国に於いては多くの統制会社が続出した。それは資本家が自己擁護のために官及び軍と結託して生まれたものである。従ってその中枢メンバーは概ね軍人及び官僚人によって占められていた。1940年のある夜、正吉の家ではささやかな祝宴が張られていた。それは正吉が明日から木村統制会社の某位置につくためだった。当時、一般の風潮として、そうした役員になることは大変名誉なことと思われていた。隣人、孝太の妻などは大変それを羨んだほどだった。正吉の娘秀子と隣家に下宿している画家の上田とは人知れず愛し合っていた。上田は空襲下にあっても秀子の美しさを讃えた。また戦争以来の日本が美ということを口にするのを避けたがっている傾向を彼は慨いた。数日後、統制会社における正吉は生来の善良でユーモラスな性質から一般の人々の要求なども快く受け入れ、女事務員などにもやさしい人として好評だった。しかし、このことは上役で官僚出身たる奥村や古屋には面白くなかった。なぜなら奥村等によれば現在の日本を導いているのは軍人と役人である。いやしくも役人たるものは軍人と同様、威厳をもって人民を威圧するものでなければならなかったからである。正吉は烈しく叱責された。そして、その気軽なユーモラスな態度を捨てるように命じられた。正吉は困った。しかし命令である。彼はやむを得ず威張る練習をして見た。何も知らぬ彼の妻子は夫の変貌を不審に眺めた。幾日かたち、正吉は辛うじて奥村らのいわゆる「役人の風習」を身に装うことが出来るようになった。奥村らは喜んだが、妻や娘や隣人の孝太はそれを嘆いた。ある日、彼は奥村の家に呼ばれた。それは正吉が奥村の部下として彼の閥に加えられたしるしであった。そこで、彼は奥村の妻から彼の娘秀子を夫人の甥である林の嫁として差し出すように請われた。そうすれば、彼は奥村の親戚として彼の将来が保証されることになるのである。奥村夫人は軍人の兄を持ち資本家の父を持つ有力な存在であった。今の時代は軍人と財閥そして官僚、これらの背景を持たない人間は個人として価値のないことを力説された。正吉は土産として牛肉や砂糖をもらって帰り皆にその話をした。しかし妻や娘はよろこばなかった。妻は言った。なぜ今時こんな貴重な品物が奥村の家にはあるのだろう。彼女にはそれが不思議だった。それらは奥村夫人の兄である軍人の所から届けられたものだった。そうした時、隣に下宿している画家上田に召集が来た。数日前から秀子の肖像画を描いていた上田はその画を描きつづけることも出来ず出発した。秀子は泣いた。牛肉の一件で妻に責められて以来、奥村に対して少し懐疑的になった正吉は、日がたつにつれいろいろなことが分かってきた。表面、厳粛公正を装いながら裏面で軍人や資本家と結託し横流し、収賄等をしている彼等役人の正体を遺憾なく見ると同時に娘と結婚せんとしている林がすでに他の女と関係あることを知った。彼は懐疑を怒りと化した。同時に国民を欺き駆り立てた戦争も日に夜を次ぐ空襲によって惨憺たるクライマックスをもって終結した。記念すべき八月十五日は来た。正吉は辞表を持って会社へ行った。奥村等は統制会社の解散を奇貨としてストックを盗み去ろうとした。それを見た正吉はかっての抑えに抑えられた彼ではなかった。今や自由にして正義を愛する人民として上役達を打ちのめした。そして昔の善良なユーモラスな一市民に立ち帰った。彼の家族と隣人とはそれを喜んだ。同時に愛する彼の娘秀子は復員兵士たる上田と幸福な結婚をすることが出来た。彼等一同は美しい秋空を眺めながらしみじみと幸福な平和を讃えたのであった。

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