初夜なき結婚
劇場公開日:1959年2月10日
解説
川那辺きみゑの原作を、新人・西沢裕子が脚色、「男十九の渡り鳥」の田中重雄が監督した、医学生とその妻との純愛物語。撮影も「男十九の渡り鳥」の高橋通夫。
1959年製作/93分/日本
劇場公開日:1959年2月10日
ストーリー
青年外科医勝木健吉は、琵琶湖の遊覧船の船長の娘で、カリエスを病む並木綾子を知り、結婚を申し込んだ。高原の療養所でギブスベッドに寝たきりの綾子と、彼女の病を治すために整形外科の勉強をはじめた健吉の、かたちばかりの結婚生活がはじまった。長く単調な療養生活ではあったが、夫の献身と温い愛情につつまれた綾子は幸せだった。六時半起床、七時洗面、七時半朝食、十時--十一時安静時間、ラジオ、読書、執筆、入浴の禁止……、厳しい闘病生活ではあったが、いつかはきっとやってくる幸いを待って、綾子はベッドで三年の日を送った。結婚はしたものの、独身同様の健吉は、ボタンつけから洗濯まで自分でやらなければならなかった。そんな彼に若く健康な看護婦・野瀬三枝子が同情して、なにかと世話をした。そして二人についての噂がいつしか看護婦たちの口の端にのぼるようになった。中庭で行われたバレー・ボール大会をベッドから手鏡で見た綾子は、健吉が自分と結婚して果して幸福なのかどうか、深刻に考えた。元気な三枝子と健吉の明るい会話を聞くと、綾子の胸は嫉妬で痛んだ。三枝子は健吉に真剣な恋心をよせて、ある夜彼の胸に身を投げかけた。しかし、妻を愛する彼は沛然と降る雨の中に部屋を出て逃れた。その夜の思いがけぬ動揺をしずめ、妻の薬代と手術費を捻出するために、彼は六カ月の南洋航路に船医を志願した。出発の晩、病室を訪れた健吉は、「今晩だけはいっしょにいて……」とすがりつく綾子をふり切って去った。留守中三枝子は担当をかえられた。自殺を計った綾子は、予定を早めて帰ってきた健吉に助けられた。それから一年、待望の綾子の手術は成功した。そしてまた一年がすぎた雪のふりしきる夜、とうとう長く辛かった二人に、本当の結婚の日がやってきた。