江戸は青空
劇場公開日:1958年8月3日
解説
裏長屋の一家族を舞台にした喜劇で、原作はオール読物所載、山本周五郎の『かあちゃん』。これを久里子亭が脚色、西山正輝が第一回作品として監督した。撮影は「白蛇小町」の本多省三。出演は「女狐風呂」の林成年、中村玉緒に、沢村貞子・月田昌也、それに新人島田竜三など。
1958年製作/60分/日本
劇場公開日:1958年8月3日
ストーリー
天保年間、江戸の庶民の生活は日毎に窮迫していた。やもめのおかつは、長男の市太を頭に、おさん、次郎、三郎、七之助の四男一女をかかえ、長屋に住んでいたが、一家総がかりでセッセと金を貯め、けちんぼ一家として知られていた。居酒屋で一家の貯めこみぶりを聞いた若者、身よりのない勇吉は、夜中におかつの家にしのびこんだ。しかし、おかつ一家の倹約ぶりは、欲ばりから出たものではなかった。三年前、長男の大工の市太の同僚である源さんが、ふとした出来心から悪事を犯し、罪に服した。女房子供のある身で出牢後の生活は、さぞ困るだろうと、おかつは子供たちと相談し、日日の生活も切りつめて、源さんのために金を貯めることに精出していたのである。貧しい食事のあとで子供達が眠ってしまった後、針仕事を始めたおかつの前に、頬かぶりをした勇吉が現れて、金を出せとおどした。がたがたとふるえている彼を見て、おかつは金を貯えている由来を話し、黙って出ていこうとする彼に食事をさせ、遠い親類の息子という名目で、家族の一員として扱ってやることにした。あくる日の夕方、一家の出迎えのうちに源さんが牢から帰ってきた。夕食の膳には心づくしの料理と酒がならんでいた。金包みをさし出すおかつに、源さんと女房は身をふるわせて泣いた。ある日、勇吉の身許とどけを出すよう大家から知らせがあったが、おかつは知合いの易者にたのんで、誰にも知られぬよう巧みに計らってやった。働きに出かけることになった勇吉は、自分の弁当だけが他の子供達と違って特別なものなので、やはり自分は他人なのだと気にした。しかしそれは彼を恋するおさんの仕業だった。今はおかつの母性愛が真実なのを知った勇吉は、心のうちでそっと、“かあちゃん”とよびかけてみて、涙するのだった。