劇場公開日 1949年7月26日

続青い山脈のレビュー・感想・評価

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4.0女が殴るのは暴力ではない。

2023年8月15日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1949年。今井正監督。生徒の男女交際を巡って、いよいよ理事長や体育教師との対決を迎える理事会が開催される。成りすまし工作までして挑んだ主人公側だが、話は脱線し続ける。男女交際について同意が得られ、多数決で勝利するが、体育教師によって工作が暴露されて形勢不利に。しかし、芸者の機転で体育教師の弱みをつくことで、一見落着する。このあたり、物語の展開は面白いが、画面の展開は平凡で面白みに欠けるのが残念。 その後、発端となった女学生と高校生の海辺デートと暴力沙汰、偽装手紙をめぐる生徒同士の和解などがあるが、ここで契機となっているのは「殴ること」。冷やかしから暴力に発展する男同士の喧嘩はしてはならぬこととして描かれるが、和解の条件として偽の手紙を書いた女学生が主人公を平手打ちするのは暴力としては描かれない。そういえば、理事会でも女性教師が医師を殴ったことをめぐってひと騒動あったが、その際の言説(芸者が男を殴る)も含めて、女が殴ることは男が殴ることとは意味が異なっており、暴力ではないことが前提となっている。殴ることをめぐるジェンダー。 さらに、主人公の女学生の平等感覚のするどさも際立っている。デート相手の高校生が殴り合う姿をはらはらしてみた後、「あなたのことが好きだわ」と連呼するのだが、その連呼は男からの恋の意志表示を受けるまでは宙ぶらりんのままだと認識されているし、前述したように、発端の偽手紙の女学生から殴られないことには、一度頭にきた彼女を殴っている以上、和解にはならないと認識されている。女の間では殴る、殴られるはつりあうべきものなのだが、男の間では、殴られてても殴り返してはいけないのだ。 原節子が殴ったり、自転車に乗ったり、明るい笑顔で笑ったりするのは、同時代の小津監督や成瀬監督作品ではなかなかお目にかかれない。その意味でも貴重。

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