顔(1957)のレビュー・感想・評価
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終戦後、復興期にある日本の空気感
大木実、岡田茉莉子、笠智衆、など人気俳優が
要所にキャストされた和製サスペンス。
シーンの転換、音楽による演出、カメラアングルなど
各所に欧米(特にフランス映画)の影響が感じられる。
今では、当然のように使われる音楽による演出
(例えば、不安を煽るような弦楽器の音など)
が、何度も使われていて、どこか初々しささえ感じる。
不幸な生い立ちのヒロインが、トップモデルとして
成功する影で起きた事件…
『砂の器』との共通点も多い。
戦後十数年しか経っていないはずだが、
不幸な生い立ち、にフォーカスされること自体、
当時の日本が徐々に平和と繁栄を取戻していたことを
示している。
若い世代の方は、こういう映画を通じて
復興しつつある日本の空気を感じてほしいです。
松本清張の原作を大幅に改変し、全く別の物語を作り上げている。
WOWOWの放送を録画にて。
松竹に移籍直前の岡田茉莉子が東宝から客演した松竹映画。
岡田茉莉子主演のために企画されたのだろう、原作は俳優の男が主人公だが、ファッションモデルの女に置き換えている。後にテレビドラマ化された中にも女版は作られてはいるものの、ここまでの改変はないだろう。
このため、原作の持つ「顔」というタイトルの意味が薄れてしまった感はある。
1957年という公開年においては、殺人という行為の恐ろしさは現代よりも相当に強かったのだろう。映画はスリラー然としていて、音楽などもおどろおどろしい。
が、この時代の映画としてはかなりスタイリッシュな演出ではないだろうか。
監督:大曽根辰保…松竹ではBクラスの監督だと思うが、時代劇などを多数手がけたベテラン。
脚色:井手雅人、瀬川昌治…何本かコンビで映画の脚本を担当している。
音楽:黛敏郎…後に『天地創造』でアカデミー賞作曲賞にノミネート。
原作では、目撃者に顔を覚えられていると危惧した殺人犯の主人公が目撃者の殺害を計画するが、会ってみるとその目撃者は顔を覚えていなかったことが判り、殺害する必要がないと安堵する。そしてその安堵感から墓穴を掘ることになる、松本清張得意の心理サスペンスだ。
岡田茉莉子演じる本作の主人公も、大木実演じる目撃者が顔を覚えているか確認して殺そうと企むが、大木実が小悪党で、企みは実行されない。大木実側の行動も並行して描かれるので、顔を覚えられているかという岡田茉莉子の心理描写は少ない。
当時、女性の憧れの職業だったと思われるファッションモデルの世界で、岡田茉莉子は恩義のある先輩を陥れて成り上がろうとするしたたかな女だ。
キリリとした美しい目鼻立ちを真正面のアップで捉えるシーンが多用される。モノクロの画面に映える。
貧しい生まれの岡田茉莉子は、やむなく裏社会に身をやつしていた。まだ夢を追える若い身だった。新たな生活を夢見て上京する途中の列車の中、過去に関係のあった指名手配犯に迫られて逆に列車から突き落としてしまう。
救急搬送された病院で息を引き取った指名手配犯を憐れんで花を贈ったことが仇となる。指名手配犯を追っていた地方のベテラン刑事(笠智衆)の感が働く。
華やかな世界での成功を夢見た女が、過去のシガラミを断ち切るためにとった行動が、結局自分をどん底へと突き落とす。運命のいたずらによって破滅するという要素を原作から引き継ぎながら、全く異なる物語を作り上げているのは、見事な脚色だ。
ファッションの最先端レナウンが実名でショーの舞台になっている。
この企業が倒産することなど、誰も思わなかっただろう。
目撃者石岡を演じた大木実は、1963年に放送されたNET(テレビ朝日)のテレビドラマ版では主人公の井野良吉を演じている。
そういえば、松本清張の「砂の器」で〝紙吹雪の女〟は岡田茉莉子に似ている、と表現されていた。「砂の器」の連載は1960〜61年だから本作より後だ。
ストーリーが最高
Amazon Primeで視聴。
ストーリーが最高。63年前の映画なのに新鮮である。
63年前の日比谷や銀座の景色が見れたことが興奮。
笠智衆さんの田舎刑事の役が非常に上手いと思いました。
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