緑なる人(二部作)
劇場公開日:1956年6月8日
解説
“主婦の友”に連載された流行作家北条誠の同名小説を、「四人の誓い」のコンビ田畠恒男が脚色・監督し、布戸章が撮影を担当した。主な出演者は「ここに幸あり (二部作)」の水原真知子、山内明、「美貌の園 (前後篇)」の菅佐原英一、「女の足あと」の小林トシ子、「白い魔魚」の杉田弘子、沢村貞子、「父と子と母」の滝花久子など。
1956年製作/日本
劇場公開日:1956年6月8日
ストーリー
第一部・別れの夜汽車--野津加奈子は以前、有馬産業の社長三谷康一郎の家に世話になっていたが、康一郎に挑まれて飛び出し、いまは津谷未亡人の家で一人、下宿住いをしていた。そこへ田舎から母のきぬと姪美代子が上京してくることになり、出迎えに行った加奈子は折悪く駅の階段で康一郎と妹瑛子に出逢い慌てて逃げたため、母たちとはぐれてしまった。だが親切な大道寺匠は、加奈子の下宿へ二人を無事に送り届けてくれた。大道寺は勤務先の九州産業の解散から、親友吉池清の妹章子の世話で、有馬産業に就職することになった。章子は社長康一郎の秘書だが、彼とは割りない仲だった。一方、加奈子に未練を持つ康一郎は築地の料亭で彼女をモノにしようとしたが加奈子は必死に逃れ中老の紳士矢倉の計らいで虎口を脱した。加奈子はとあるビルの入口で有馬産業に働いている大道寺と逢い、互いに云い知れぬ愛情を感じた。意地になった康一郎は加奈子と大道寺の仲を知ると妹瑛子のいさめもきかず、嫉妬にかられて大道寺を高知支店に転勤させてしまった。だが大道寺が加奈子に見送りを頼む電話を偶然盗み聴いた康一郎は、大道寺の使いと偽り彼女を郊外の旅館に連れ出し暴力をもって迫ったが、加奈子は振り切って外にとび出した。一方、東京駅では列車に乗り込んだ大道寺が、一人淋しく高知へ旅立って行った。第二部・愛の奔流--執拗な康一郎の追求を逃れるため、勤務先を辞めた加奈子は、本の行商で生計を立てていたが、その窮状を救ったのは意外にも矢倉だった。彼は大道寺の先輩で、加奈子の姪美代子は、実は矢倉と加奈子の亡姉千代との間に出来た子であった。加奈子はある日、高知から所用で戻って来た大道寺の車に轢かれ、軽傷を負う。大道寺はこれがモトで康一郎と対決し、辞職せざるを得ない破目に陥入った。加奈子に対する矢倉の好意は、やがて噂の種となり、大道寺まで二人の仲を疑うようになった。一方、康一郎は事業の失敗から倒産に瀕し、自棄になった彼は又もや加奈子を熱海へ誘い出した。だが、その場に駈けつけた章子の変らぬ愛情は康一郎を翻然と目覚めさせた。大道寺も矢倉から総ての事情を聞いて自分の誤ちを知り、加奈子たちのいる旅館へ急いだ。数日後、矢倉の招きで湯ケ島に出かけた加奈子と大道寺、そして美代子らの顔は、久々に晴れ晴れと輝いていた。