妻の心のレビュー・感想・評価
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うっかり結婚、うっかり跡継ぎ
高峰秀子の演技の細やかさと幅の広さに改めて感動した。長男の千秋実、次男の小林桂樹、情けなさとボソボソ感含めて上手い!
是非とも嫁にと求められてうっかり結婚したらしい喜代子(高峰秀子)、その夫は兄が東京にとんずらしたためいやいや家業の薬屋を継いだ次男。ちょっと前まで戦争だったのに街も世間も経済も変わりつつあり昔ながらの薬屋商売は流行らない。家の中はといえば見合い話を纏めるのが趣味の姑が居て、嫁は家に居るもんだとか子ども(孫)を早く生んで欲しいとか、普段も着物を着ている女の周辺は常にそんなんばっかり。洋服を着る若い世代からは新しい自由な空気を感じる。男も女も可哀想だと思った。今だにそんな考えが若い人たちを苦しめてる。おじさん達や親世代は自らにしみこんでる価値観を子ども世代・若い世代に無自覚に熟慮なく押しつけないで欲しい。長男家族が来てからのあの大きな家での居心地の悪さ、誰が居て居ないのか常に互いに窺っている。笑えたのは、妻・嫁の立場の女性は夫に対しては声低くどちらかと言えばぞんざいに話すこと。夫以外に対しては声を高めにして明るく話す。今の日本もそんな感じだけれど他の国はどうなんだろう?
なんとなくしあわせ、夫婦ってこんなものかなっていう感じでこの映画は終わる。それが日本的で淡くて淋しかった。そんな映画の中、三船敏郎は別の宇宙から到着しました!的な異人でやたらかっこよかった❗️
家族経営と金と不倫
1956年。成瀬巳喜男監督。地元では大きな薬問屋の内実は苦しく、若い旦那と妻は母親が不服であることを承知で喫茶店を始めようとしている。金策や料理の準備などで忙しくなっていく中、家を飛び出していた長男とその家族がふらりとやってきていついてしまう。
構えだけは大きい店舗兼自宅のなかで右往左往する人々。家族経営の行き詰まりと若い夫婦の苦闘。そしてなんといっても不倫未遂。雨宿りという特別な時間のなかで、しかし思い切れずに未遂に終わる。8年後、似たような家族経営の商店を舞台に、思い切ってしまった男女の不倫が「乱れる」で描かれることになるだろう。二作を比べた時の異同に感動します。どちらも複雑な感情の機微を複雑なまま描くすばらしい作品。
単純な話なのに最高のサスペンスを生む
家業の薬屋の仕事を継いだ次男坊夫婦。経営が苦しい事から、やむなく店舗の庭を改築して喫茶店経営を考える。
長女は嫁に行き、母は喫茶店に反対している。
するとそこに、東京の長男一家が転がり込んで来る。
それだけの話。
それだけの話なのに、何故にこれほどまでに最高のサスペンスが生まれるのだろうか。
しかも妻の高峰秀子の友人(杉葉子)の兄として、三船敏郎が最高の大スターのオーラを発散させながら登場するのだから。
スクリーンを見つめながら「一体どうなるのだろう…」と、ハラハラしてしまった。
その為に、最後があまりにもあっさりと終わってしまうのには驚きを隠せないのだが、こんな単純な話が最高のサスペンスを生むとは、成瀬巳喜男の演出力には息を呑んだ。
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