息子一人に嫁八人
劇場公開日:1955年12月6日
解説
法勝寺三郎の脚本を「右門捕物帖 恐怖の十三夜」の志村敏夫が監督、「次郎物語(1955)」の鈴木博が撮影を担当した。主なる出演者は「三等社員と女秘書」の宇津井健、「次郎物語(1955)」の花井蘭子、「柔道流転」の日比野恵子、「身代り紋三 地獄屋敷」の宇治みさ子など。
1955年製作/77分/日本
劇場公開日:1955年12月6日
ストーリー
日本舞踊若松流家元の独り息子小坂栄一は、西南大学の二年生でまれにみるような美男子である。母親のみつは、この独り息子をこわれ物にでもふれる様にして育てているが、栄一にとってはそれがかえって鼻につく始末。若いお弟子さん達の殆どが、踊りよりも若師匠の栄一のハートを射止める事が第一の目的らしい。芸者の千代菊、おはん、雛妓のとんぼ、小桃等はその代表者、北村商事の社長令嬢富美子や料亭みさわの娘たつ子もその例にもれず、毎日踊りに通ってはなんとか栄一をお茶に誘おうと懸命である。みつは栄一の襲名披露が近づいたので栄一の体にはことのほか気をくばり、蚊にくわれても医者よ薬よと大騒ぎ。所が或る日栄一に大変な事が持ち上った。西南大学のラグビー選手北村克郎が足のケガで出場出来なくなった事から、体のがっしりした栄一が眼にとまり無理に引っぱりこまれた。連日の猛練習で昨日は足、今日は手と真赤なスリ傷を作って来る栄一をみるとみつは眼も廻さんばかり。合宿練習が始まると、栄一は今度大学にも日本舞踊研究会が出来てそれの指導をしなければならないと家を飛び出した。その上悪い事には、東北大学とのラグビー試合が襲名披露日と重なってしまった。当日姿を消した栄一を探しに大学に来たみつは、テレビに写っている栄一の姿をみつけると我を忘れラグビー場に車を飛ばし声をかぎりに声援を送るのだった。試合が終って襲名披露の式場に現われた栄一が、われんばかりの拍手に迎えられているのをみて、みつは今は亡き夫の写真に向って「わたしには又一つ心配の種がふえましたよ」と嬉し涙を流すのだった。