「親戚には石田三成」姉妹(1955) kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
親戚には石田三成
山の発電所で働く父親。家に帰ると下に弟が3人もいるのだ。いわゆる貧困家庭ではないのだが、発電所では首切りに対する労働争議が起こっているほどだ。ただし、人数が少ないせいだろうか、人員整理に対抗するには力が弱そうだ。冬休みに帰省したとき、3か月無事故だと1000円の報奨金があると言われてたのに、最後の日に停電。
圭子は高校3年でクリスチャン。おしとやかでお姉さんらしい。妹の俊子は活発で嘘を言えない性分。親戚の石田三成(兄弟が信長、秀吉、家康w)が来てるというのに、「お乳が張るの。今にお姉ちゃんよりおっぱいが大きくなるわ」などと、男性の前であっても包み隠さず話してしまう。社会に対する不満や反発をも臆さず口にして、革命とか闘争という言葉もポンポン出てくるのだ。小間物屋のはっちゃんの家に赴き掃除をしたり、人の不幸も見過ごせないという性格のいい娘。まだ中学3年だというのに・・・
下宿先の伯母さんの夫(多々良純)が「戦争でも始まらなきゃ不景気でかなわねーや」と言うと、俊子はそれに反発、「伯父さん、困るよ。戦争なんて大反対よ」。伯父さんは「日本人は戦争がない食えないんだよ」「伯父さんはビキニの灰でもかぶればいいんだわ」と切り返す。日本が高度成長期に入る前、まだ貧困だった頃。自然に行動する自発的ボランティアなんてのは、今の時代考えられないほど。
ストーリーは細かなエピソードが多いが、それを中原ひとみの演技のおかげで飽きさせない。特に同級生の女の子とのキスシーンは一生残ってしまいそうなほど印象的。基本的な流れとしては、姉の圭子が卒業し、岡という密かな想い人があったにも拘わらず銀行員と見合いして結婚するまでを描いた作品。途中のエピソードにも、DV夫(殿山泰司)に悩まされる山の女性や、手紙によって結婚を決めた働き者の女など、俊子の心に結婚観を変えるものがあった。それでも圭子の決心に対して理解を示し、やがて涙の別れとなる・・・詰め込みすぎにより、ちょっとだけ弱くなってるが、明らかな名作。
【2012年ケーブルテレビにて】