月を斬る影法師
劇場公開日:1955年6月8日
解説
「麝香屋敷」の八尋不二の脚本を、「七つの顔の銀次」の三隅研次が監督する。撮影は「駕で行くのは」の本多省三、音楽は「哀しき富士の白雪よ」の大久保徳次郎の担当。主なる出演者は「天下を狙う美少年」の勝新太郎、「風雲将棋谷(1955)」の長谷川裕見子、「次男坊判官」の峰幸子、「駕で行くのは」の小町瑠美子、「舞妓三銃士」の江島みどりなど。
1955年製作/75分/日本
劇場公開日:1955年6月8日
ストーリー
江戸。料亭花むらの大広間で常盤津の温習会が催され、美しい女師匠文字春をはじめその場に居合せた娘たちは美貌の若侍新二郎の飛入りの撥さばきに見惚れていた。江戸勘定奉行相坂豊前守の用人北村軍蔵は、文字春に首ったけなので、怒ってその場を飛び出した。夜の大川端に帰路を急ぐ北村の前に、白頭巾の男が立ちふさがり、佐渡金山奉行の相坂も今は勘定奉行に出世して、そのおかげで北村も羽振りがよいことだと嘲笑して去った。その白頭巾の背に折鶴の紋を見た北村は不安と恐怖に仰天した。というのは五年前豊前が佐渡金山奉行の当時、公金をごまかして私腹を肥す悪行に加わることを肯じなかった唯一人の同僚、廉潔の老武士香月新左衛門を用人棒陣内一平と謀って斬り殺した記憶が蘇ってきたからだ。そして香月家の紋が折鶴だった。それをきいた豊前守はせせら笑ったが、その時又も白頭巾が現われ文を投げて姿を消した。豊前の娘で父に似合わぬ清純の乙女早苗は、この騒ぎに気を失って倒れたが、それを介抱してくれたのは意外にも新二郎だった。ある夜新二郎からの付文に呼寄せられて大川端に赴いた早苗は、新二郎こそが白頭巾であることを知り、而も父にまつわる真相をきいた。早苗は父に問い正したが豊前はそれを否定し、その上早苗を囮にして新二郎を呼び寄せた。香月新左衛門の忘れ形見新二郎は、今や単身颯爽と仇の中に乗りこみ本懐を達した。