透明人間(1954)のレビュー・感想・評価
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透明人間特攻隊の生き残り
Netflixで鑑賞。
後の変身人間シリーズの原型となった特撮スリラー。
オリジナル版と大きく異なる点とは、本作の透明人間は悪人ではなく、正義のために戦う存在、と云うところ。
透明人間を名乗るギャングに存在を汚されたことに怒り、新聞記者の小松と共にギャングの正体に迫っていく。
南條が働いているキャバレーのオーナーがギャングの黒幕だったり、南條のアパートの住人が事件に関わって殺害されてしまったりと人間関係が狭く、多少強引で都合のいいストーリー展開ではあるが、南條と盲目の少女まりの交流や悲劇的なラスト・シーンはとても感傷的であり、引き込まれた。
「ゴジラ」の特撮を担当した円谷英二が特撮と本編撮影を担っている。元来彼はカメラマンでこれが最後の本編撮影だ。
円谷は大映で「透明人間現わる」の特撮を手掛けている。その経験を活かし、本来の職場でつくりたかったのだろうか。
オマージュと見られるシーンがいくつかあるし、透明人間の演出は今でも色褪せぬほどに高いクォリティーだと思う。
透明にされた体は、死ぬまで元に戻らない。特攻兵器にされた南條の悲しみや苦しみは如何ばかりだったであろう。
病気がちの母親に会おうにも、自分の姿を相手には見せられない。戦争のために文字通り己を抹消されてしまったのだ。
戦争の非人道的な面を象徴しているようで、戦後間も無い1954年に製作されたからこその説得力と重みがある。
もう二度と、南條のように苦しむ人間を生み出してはならない。反戦の強いメッセージに胸が締めつけられた。
1954年と言えば「ゴジラ」が公開された年でもある。本作は同作の翌月に公開されている。この2作品が後の特撮作品の主題に反戦や科学の暴走への警鐘、人類の愚かさの糾弾が盛り込まれていく基礎をつくり上げたのではないかと思う。
[以降の鑑賞記録]
2022/01/14:DVD
2024/08/13:Amazon Prime Video(東宝名画座)
※修正(2024/08/13)
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