わが恋はリラの木蔭に
劇場公開日:1953年9月30日
解説
中山正男の原作を「アチャコ青春手帳第四話 めでたく結婚の巻」の井上梅次が脚色監督している。撮影は「戦艦大和」の横山実。音楽は「野戦看護婦」の服部正。出演者の主なものは、「さすらひの湖畔」の中山昭二、「早稲田大学」の宮城野由美子、「モンテンルパ 望郷の歌」の佐々木孝丸、「野戦看護婦」の藤田進、関千恵子など。
1953年製作/97分/日本
配給:新東宝
劇場公開日:1953年9月30日
ストーリー
北海道の夏は総てが生々としている。久我信太郎は東京から三年ぶりで帰ってくる牧場の一人娘啓子を迎えに、みどりのポプラ並木に馬車を馳せた。信太郎の父潤造は当時七歳だった彼を連れて、この伏見牧場に雇われた。信太郎は伏見夫妻の好意で大学の医学部まで出して貰い、啓子とは幼い頃から数々の思い出を持っていた。しかし汽車から降りた啓子は、彼女の東京のバレー団員達と一緒で、帰りの馬車の中、伏見家でのパーティと彼等が謳歌する青春の息吹きは、何故か信太郎を不機嫌にした。同団の山川は啓子に求婚し、東京で啓子にバレーを学ぶべきだと説いた。啓子はバレーには憧れていたが、一方彼女が求めていたものは信太郎である事を、昔二人のイニシァルを彫りこんだ白樺の木の下で信太郎と邂逅して気が付いた。二人は東京で結婚する事を固く約束した。しかし、牧童の過失から牧場が火事になり、重傷を負った伏見富太郎の遺志で、二人は結婚出来たが、牧場を離れる事は出来なくなった。バレーの夢を失った啓子は何にも増して信太郎を愛した。が、アイヌ集落に回診して現地の惨状に直面した信太郎は、医者としての人類愛から啓子や潤造を残して、奥地の診療所に赴任して行った。それから一年、啓子の母は死んだが、啓子はじっと信太郎を待った。その頃信太郎は子供のヂフテリアの手当から破傷風にかかっていた。危篤の電報を受取った啓子は駈けつけたが、アイヌ集落に着いた時見たものは、信太郎の死を悼み合って号泣する、アイヌ達のあわれな姿だった。ただ啓子の贈ったオルゴールのメロディのみ、彼等の鳴咽の中をしめやかに流れていた。