緑の風
劇場公開日:1952年7月31日
解説
製作は「出世鳶」の杉山茂樹。富田常雄の原作で、「華やかな夜景」の柳井隆雄(脚色)、原研吉(監督)、森田俊保(撮影)の三人が再び製作に従事したもの。出演者の主な顔ぶれは、「二つの花」の高峰三枝子、「娘はかく抗議する」の大木実と紙京子、「東京のえくぼ」の上原謙の久しぶりの松竹出演、その他吉川満子、夏川大二郎、河津清三郎などである。
1952年製作/101分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1952年7月31日
ストーリー
外科医高木啓子は盲腸患者の手術を佐々院長にまかされたが、既に手遅れになっていたため死なせてしまった。啓子に落度はなかったが、彼女にとって初めての大手術であったため、このことは非常な痛手となった。それを慰め力づけてくれたのは内科医の同僚緒方だった。緒方は啓子を愛していたが内気なため積極的な表現が出来ないでいるうちに、彼の親友の瀬戸が、指の治療を受けて一眼で啓子が好きになり結婚を申込んだ。彼は少壮実業家で、一年ほど前妻を胸の病気で失った男だった。啓子の父の亡きあと母と弟をかかえて生活と闘っていたので、結婚に対しても現実的な考えを持っていた。資産も実力もある瀬戸にはかなわぬと緒方が他の娘と婚約したとき、啓子は瀬戸と結婚をしてもよいと考えた。が、このことで、啓子の従兄でよき相談相手の曾根隆は思いがけず自分が啓子を愛していたことを発見した。啓子の弟荘太郎は銀座裏のアルバイトで、花売娘の佐川ミキという女と仲良しになった。ミキの母は啓子の第一回目の手術で死んだ患者だった。荘太郎はミキと結婚しようとして啓子に強く反対されると家を出てしまった。貧乏作家の隆は荘太郎とミキの結婚はバカげているかも知れないが、美しくもあるじゃないかと啓子にいうのだったが、啓子は人生は詩や小説とはちがうといいはるのだった。瀬戸との結婚の迫ったある日、啓子は掛け持ちしている婦人科病院から急患でよばれた。病人は子宮外妊娠破裂で一刻を争う重体だったが、それが意外にも瀬戸の囲っていた女だった。啓子の心は驚きと怒りに乱れたが、それを押えて執刀した。そして無事に手術を終った。色々と弁明する瀬戸の言葉も啓子にとっては無駄に思えるばかりだった。瀬戸との傷手がいえた頃、ある夜隆が啓子を散歩にさそった。そしてとある「焼とり」屋ののれんをくぐった。屋台の中で甲斐々々しく働いているのは荘太郎とミキだった。啓子は隆によって人生の新しい面へ眼が開かれたような気がするのだった。