「奇妙な三角関係」お国と五平 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
奇妙な三角関係
1952年。成瀬巳喜男監督。夫の仇討のために若い奉公人の五平とともに復讐の旅を続けるお国。仇討相手は本来は許嫁だったが軟弱で頼りないために別れた男(元カレ)。
旅をするうちにお国と五平の間の主従関係が微妙に変化していくことを丁寧に(しつこいくらい)描くのはさすが成瀬監督。心情の揺れ動きが後年の(といっても3年後!)「浮雲」を彷彿とさせます。さほど愛してもいない夫のための仇討に疑問を深めていく一方、仇討相手のことは憎からず思いだすお国と、忠義一辺倒でありつつお国への思いを募らせていく五平。そこへ現れる仇討相手のなんともシニカルな命乞いとお国への執着。
谷崎潤一郎原作の戯曲は1場の議論劇だということなので、いきなり3人が出会って議論するのだろうと推測しますが、この映画はその前提を、紆余曲折を丁寧に、描く。そこがすばらしい。逆に、仇討相手が吹く尺八だけでなく、旅芝居、川渡での踊り、浄瑠璃、盆踊りなどの演劇的要素がふんだんに盛り込まれているのは原作を考慮したためか。また、谷崎でいえば「刺青」以来の主従(支配)関係と恋の系譜につながってもいる。いろんな要素の複合体としての映画。
これまで見たなかで一番美しい木暮美千代を見ることができました。病に伏したときに目をつぶった表情はすごいくらいです。
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