スパイと貞操
劇場公開日:1960年6月22日
解説
昭和十四年頃の実話から取材したスパイもので、小坂慶助の原作を、赤司宏三が脚色し、「人形佐七捕物帖 裸姫と謎の熊男」の山田達雄が監督した。「女奴隷船」の山中晋が撮影した。
1960年製作/80分/日本
原題または英題:Scorching Sand
配給:新東宝
劇場公開日:1960年6月22日
ストーリー
戦雲急を告げる昭和十四年、憲兵本部は頻々と起るスパイ事件を調査するため、特別捜査班をもうけて内偵を続けた。軍機密漏洩事件を内偵中の井上少尉がキャバレー“山城”の女給と謎の心中をとげ、事件の糸口は切れた。情死現場に急行する途中、小坂憲兵少尉は一人の女をひき倒した。死んだ女給の家はすでに刑事が踏み込んでいた。小坂は設計技師に変装して“山城”の内偵を始めた。小坂の車がはねた女は海軍省軍令部筆生清川絹子で、介抱した大栄貿易の社長山野直二に好意を寄せていた。参謀将校連の鞄を盗み取っていた犯人が検挙された。オトリ戦術で釈放されたが、直ちに暗殺された。井上少尉のメモにあった芝浦の港湾会社と水保洋服店を張った小坂は、フィルムを洋服の襟に入れて運ぶ巧妙な手口を看破した。しかし手入れ寸前、店は閉鎖された。絹子をドライブに誘った山野は、軍の上層部と結託する大栄貿易のために海軍省の動きを知らせてくれるよう頼んだ。“山城”の内偵をつづける小坂は女給の一人をホテルの一室に誘ったが、持ち込まれたカクテルに井上の時と同じ毒が盛られていることを知った。女給達を使って軍の幹部に近づかせ、機密情報をキャッチしていた“山城”のマスター田宮が、山野の秘書田宮摩美の変装であることを見ぬいた捜査班は、“山城”を急襲したが摩美の口は割れなかった。海軍省の機密書類を小型カメラに収め山野に提供していた絹子は、山野が中国人であることを知っていた。小坂の諭しに、絹子は愛する山野の連絡先を教えた。捜査本部は本拠を急襲した。山野の身を案じてかけつけた絹子と、絹子を追った山野は、共にスパイ団によって射ち倒された。寄り添って息絶えた二人の顔はいかにも幸福そうだった。