第三の疑惑
劇場公開日:1960年5月24日
解説
小林達夫の原作を、灘千造が脚色し、「空港の魔女」の佐伯清が監督した推理映画。撮影は「特ダネ三十時間 白昼の脅迫 女の牙」の藤井静。
1960年製作/79分/日本
配給:東映
劇場公開日:1960年5月24日
ストーリー
左頬に大きな痣をもち、稀有の財産家である黒田梨技は十歳も年下の美貌の青年梅沢に夢中だった。結婚サギ、モグリ医者という前科をもつ梅沢を、弟弘之と同僚の新聞記者日野は思い止まらせようとしたが、梨枝はきかなかった。二人は八丈島に新婚旅行に出かけた。出発は五日と聞いたのに、二人は一日に立った。いつも弘之と日野が行くバー「ウララ」では心臓病持ちの女給の洋子が清子に死ぬ前に故郷伊豆の青島に帰りたいと数日前に相談していた。今夜も新入りのヨシ江らと談笑する弘之は、梨枝の急死の報に驚いた。日野と弘之は二人の乗った船を検べた。船室はシャネルの香に満ち、ボーイは花嫁は具合が悪く島には担架で下船したと証言した。梨枝の死後三時間も経て電報を打った梅沢に二人は疑念を抱いた。梨枝のアパートで日野は管理人から妙な事を開いた。旅行前、梨技の姿は見えず、部屋の湯水が先月の二、三十倍使用されていたというのである。しかし日野の期待を裏切って、梅沢は梨枝の遺産相続権一切を弘之に譲った。遺骨にも毒薬等の反応はなかった。日野の前に幾つかの事実が判明した。洋子が一日の船で青島へ帰って以来行先不明であること、新潟黒田屋敷の山林が売られ、梅沢が梨枝の委任状で二千万円受け取っていること……である。船室で梨枝は左側に寝たというが、痣を気にする彼女にしてはおかしい。一日の船客名簿に洋子の名は見当らない。日野の推理はアパートの多量の湯水の使用量に及ぶ……。梅沢は旅行前に梨枝を殺し、死体を切断、湯水で洗い、八個のトランクにつめ、巧みに洋子を欺して梨枝に仕立て、見送りをさげて突如一日に出発したのではあるまいか。充満した香水は死体の臭いを消すためではなかったろうか……。日野は梅沢の一日からの過去を洗った。アパートから夫婦を乗せたタクシーの運転手の口から、ホテルはすぐ分った。ボーイは、男が女の頬に化粧している妙な姿を目撃したと言った。社会部は沸いた。しかし八個のトランクは運んだ人間が開けて中を見せたという。「梅沢はクロだ」……確信しつづける日野は梅沢投身自殺の記事に驚いた。弘之に宛てた遺書は梨枝への情愛を綴り、二千万円を添えていた。弘之は疑惑を晴らさない日野を憎んだ。日野の新聞社に投書があった。資金庫を利用する男で、梅沢が彼の名をかたったという。たまたま銀行に強盗が入り、貸金庫の全借り主に召集令状がかかった。果して九州で死んだのは梅沢ではなく、遺書はすべて作りものだった。張り込む刑事達の前に、借り主に交って梅沢は姿を現し逮捕された。山林売買は、実は数千万円に及び、合せて梅沢は莫大な額をなす梨枝の装身具類を一人占めしていたのである。
スタッフ・キャスト
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日野三郎木村功
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黒田弘之今井俊二
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梨枝故里やよい
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梅沢敏山田真二
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清子藤里まゆみ
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ヨシ江春丘典子
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洋子八代万智子
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井上節三織本順吉
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吉原為吉須藤健
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佐藤貴美子峰博子
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上代洋次沢彰謙
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初老の男清水一郎
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初老の男の妻風見章子
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木材会社社長神田隆
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刑事一飯島与志夫
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肩巾の広い男高原秀麿
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銀行の守衛一牧野狂介
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船のボーイ北川巧
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運転手豊野弥八郎
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旅館の女中伊藤慶子
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医者片山洸
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下宿のお内儀歌川まゆみ
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人夫一岡部正純
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人夫二最上逸馬
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酒井長谷部健
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渡辺大木史朗
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鈴木北川恵一
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給仕一植松鉄男
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給仕二高須準之助
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社会部デスク永島明
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医療器具支配人石島房太郎
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東洋日報社・受付滝謙太郎
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煙草屋のお内儀不忍郷子
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長沢教授加藤嘉
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捜査課長白河青峰
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記者賀川晴男
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銀行の女行員藤川薫子