美しき別れの歌

解説

土岐雄三の原作を「刑事物語 銃声に浮かぶ顔」の高橋二三が脚色し、「汚れた顔」の森永健次郎が監督したもので、父一人娘一人の家庭を舞台にしたメロドラマ。「傷だらけの掟」の山崎安一郎が撮影した。

1960年製作/日本

ストーリー

江口洋助は停年を来年にひかえた商事会社の支店長である。美しい娘の敦子は、二八歳まで結婚せず、英語とタイプをマスターして外国に行くことを夢に描いているサラリー・ガールだ。ある日、伯母のトキが敦子に結婚の相手を紹介した。好感のもてる青年だったが、彼女は当分結婚の意思はないとの理由でこの話をことわった。その翌日、敦子はかねてから結婚の相手をさがしていた友人の今井啓子に山路良一を紹介してやった。洋助の幼ななじみ春枝が女将をしている料理屋天はるで食事をした啓子と良一はすぐにうちとけあった。それを見る敦子はなぜかふと淋しさを感じた。数日後、会社の専務から呼ばれた洋助は、大株主の息子で磯部正春という若い心理学者と敦子との結婚話をもちだされた。この話がまとまれば洋助には次期重役の椅子が約束されるという。ちょうどその日敦子は社のギルバート支店長からアメリカ転勤を命ぜられた。が、あれほど望んでいたアメリカ行なのに、敦子の心はなぜかはずまなかった。たまたま会社にたずねてきた良一の顔をみて、どうやら自分が彼を愛していることを知り、彼女はがくぜんとした。今となっては、みんなの幸福のためにも、敦子は正春と結婚してもいいと思った。大阪に勤めをもっている良一が帰るという日、彼は啓子とともに江口家を訪れた。洋助から敦子と正春の縁談が八分どおりきまったと聞くと、良一は急に別れをつげて去った。啓子は敦子に、良一が彼女を愛していることを告げた。啓子にせきたてられて、敦子はたそがれの道を良一のあとを追った。

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