劇場公開日 1960年5月28日

「成瀬映画を明るく照らす二人の天使」娘・妻・母 抹茶さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0成瀬映画を明るく照らす二人の天使

2023年8月31日
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鑑賞方法:DVD/BD

序中盤、それぞれの家庭事情や暮らしぶりの描写、同じ家の中で別の部屋にいる時の母と娘、妻と夫、それぞれの場面がカットを切り替えて丁寧に描かれていて、ずっと見ていられるような幸せな時間だった。

還暦祝いに作成したホームビデオの中で、早回しで洗濯や掃き掃除をするデコちゃんを見て皆が笑うシーンはもう最高だった☺️
役者それぞれが個性を出していた中で抑え気味のデコちゃんの芝居が印象的だった。

「東京物語」を思わせる、親に対して他人の様に冷たい息子・娘たちの中で唯一天使のような原節子という家族の物語。と、言いたくなるが、残酷な現実を見せつつも、キャメラの視線は決して冷たいものではなく、写す人物それぞれの事情や心情を丁寧に汲み取っていたと思う。
還暦祝いに皆がそれぞれのプレゼントを用意して渡す場面や、嫁に家出をされて酔って母親に甘えたりする場面など、息子・娘として母親に接する温かい家族の描写もあり、親に対して子供たちが持つ二面性がクッキリと現れていて、家族の複雑な関係が立体的に描かれていたと思う。

ラストシーンにふと登場する、子供に疎まれながらも健気に生きる老人(笠智衆)は後光がさすかのように輝いていた。老人ホームで楽しそうに過ごす老人達など、人それぞれの幸せの在り方を示すラストは素晴らしかった。「東京物語」の無常観とは違った、人生の奥深さと味わいを感じさせてくれる作品でした。

抹茶