「日本が誇って良い拳闘映画(若尾文子出演作)」勝利と敗北 たいちぃさんの映画レビュー(感想・評価)
日本が誇って良い拳闘映画(若尾文子出演作)
久しぶりに観たら、日本が誇ってよい拳闘映画の佳作だった。
初見のシネマヴェーラ渋谷(2018年2月26日)では「若尾文子出演作」として観たので「自分が生まれる前の若尾文子をカラーで見られて綺麗。でも出番少ない…」の微妙な感じだったが、BS日本映画専門チャンネル【蔵出し名画座】で放映されたので「もう一回観てみるか…」というニュートラルな立ち位置で見たところ、とんでもなく面白かった! そして感動した!
1960年の「拳闘映画」である本作、知らないボクサー同士の拳闘場面から始まる。そしてチャンピオンが突然引退発表して王座空席となったことから、チャンピオンを目指す3人のボクサー(川口浩、本郷功次郎、三田村元)のドラマ、それぞれのジム会長どうしの思惑・駆引き物語、恋人たちとの思いなどが描かれている。
様々な視点でのドラマの絡み合いが絶妙で、まったく飽きることなく楽しく観られる映画となっている。井上梅次監督の手腕が光る。
川口浩の恋人役は若尾文子(小学校教師)…何度も恋人役している定番ww…、本郷功次郎と三田村元の狭間で心揺れる野添ひとみ、ジム会長=山村聰を思うバーのマダムが新珠三千代(東宝)などだが、こうした関係が「横関係だけでなく、縦関係としても描かれた映画」なので面白い!
とりわけジム会長=安部徹の「悪役的だが【粋】なあたり」には感動。
物語詳細は割愛するが、この時代(1960年頃)は「テレビを見るのも一苦労」だったようで、若尾文子が川口浩の拳闘試合を白黒テレビで見ている喫茶店では他の客にチャンネル変えられたため町中でテレビを見られる店を探しまわる。また、野添ひとみはテレビでなくラジオで拳闘中継を聞いていたりする。
二度目の鑑賞で「えっ!」となったのは、本郷功次郎が野添ひとみにビール口移し場面では思わず笑わせられて、新珠三千代が山村聰に「(お金の工面するかわりに)私を抱いて」という場面は色っぽ過ぎ……(笑)
なかなか盛りだくさんのエピソードが楽しめる面白い大映映画であった。
<映倫No.11645>