血と涙と墓場
劇場公開日:1966年3月5日
解説
約二年十カ月にわたり、取材班をドミニカ、キューバ、アラブ、イスラエル、インド、パキスタン、インドネシア、中共、ソ連、ベトナムと世界の動乱地に派遣、現地の生の声を入れた長編記録フィルム。
1966年製作/87分/日本
配給:弘城興業社映画部
劇場公開日:1966年3月5日
ストーリー
ベトナム本来南北一つの国だ。だが人為的に十七度線で分割されたベトナムは、今悲劇の渦中にある。強い民族意識に燃えて武器をとる男女に、ホーチミンはわれらの手によって統一はなされると叫ぶ。南ベトナムは戦場でこそないが、豊かな田畑もいつ戦いの死に見舞われるかもしれない、恐怖にベトナムの青春はむしばまれている。ソ連平和共存路線を捨てず、中国との共産圏での主導権争いは、モスクワに高姿勢をとらせている。革命記念日に披露される新兵器は、年々巨大なミサイルとして姿を見せる。中国中共も遂に世界の核クラブに割りこんだ。人民の歓客、そしてエネルギーは五億の希望と忍耐をもって、つきすずんでいる。インドネシア大統領スカルノ指導の下に、回教と共産党がバランスをとって進んで来たこの国も、イデオロギーの対立が国内をゆすぶっている。アメリカ、中国の対立はこの国に暗い影を落し、アジアの後進地域に不気味な空気を漂わす震源地となっている。インド・パキスタン美しいカシミール地方をめぐる醜い争い慢性的な食料不足と経済困難にもかかわらず、武力は増強され、国民の敵意は増大する。同一民族が宗教により二つに分かれる、そこには宗教を捨てた人間の哀れさのみが残っている。朝鮮他民族の戦いにより、三十八度線をひかれて南北に別れた朝鮮は自から選ばずして、戦火の渦中にある。長い歴史を、圧迫され続けた民族の怒りと悲しみは深かい。ドイツベルリンを背後に東西に引き裂れたドイツ。境界の壁は人々の心に不信と憎悪の彰をおとしている。この境界を越えるのは、同じ血を受けた民族の心以外にない。ドミニカ中南米ナショナリズムの台風の目となった島。人々は燃えあがる反米感情と民族意識から、革命派と政府軍の激しい対立のルツボの中にある。第二のキューバになることを恐れたアメリカの思惑の中で、民衆の革命派への支持は根強く、小さなドミニカは、市街戦の真只中にある。彼等の真の敵は貧しい発展途上国の運命そのものである。キューバキューバ革命で民族主義的社会主義の烽火をあげたキューバは、七年前のカストロによって血と涙の勝利を収めた。数十万の民衆の支持を得てカストロの偉業は着々と進められている。イスラエル・アラブ諸国・中近東イスラエルの民が二千年前ローマ十字軍によるパレスチナからの追放以来、国境から国境へ彷徨し、遂に脱出したユダヤ。イスラエルはアラブとアラブの友国の敵なのだ。バレスチナ戦争のあと、聖地エルサレムも二つに裂かれ、一触即発め国境地帯にはノーマンス・ランドが作られ、戦いはなく静かな憩いがある。平和とは人間のいないところにのみあるのだろうか。