人生劇場 続 飛車角のレビュー・感想・評価
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1作目の雰囲気どこ行った!?
"人生劇場 飛車角" シリーズ第2作。
Amazon Prime Video(東映オンデマンド)で鑑賞。
原作は未読。
1作目が奈良平を殺したかどうかを観客に委ねるラストだっただけに、続編があると知り「その後」が気になって続けて鑑賞したが、なんと云うことだろう。かなり面食らった。
悲壮感漂う「任侠文学」だった前作の雰囲気はいったい何処に行ってしまったのだろう。東京から満州へ、おとよを追って繰り広げられるアドベンチャー物に変貌していたのだ。
飛車角がナイロンの利権を巡って仁義を通し敵中に飛び込む姿は、真の侠客としての格好良さが満載で惚れ惚れした。
だが誰が想像し得ただろう。話の舞台が遥か満州の大地へと移動して、馬賊や悪徳商人との対決に雪崩込もうとは…
途中で別の作品に変わってしまったのかと疑いたくなるくらいトーンが違い過ぎて、これじゃない感が強かった。
おとよが死に、ようやく前作のような悲壮感が漂うトーンを取り戻して、物語は一気に終幕へと突き進んでいく。
任侠道を貫いた先の飛車角の最期は、筋を通した者が何故命を奪われねばならないのかと、虚しさの漂うものであった。
最後の最後の瞬間に「任侠文学」としての姿を取り戻してくれたようで、悲しい展開ではあるがなんだか嬉しかった。
アドベンチャー
ワビサビが効いてて素晴らしかった。
前作の4年後が舞台。
今作は日本を飛び出し満州にも向かう。
日本の侠客が世界に飛び出して、どんな事が起こるのかとワクワクした。
侠客自体、時代錯誤的な扱われ方でもあり着流しで大陸に現れる様は滑稽でもあるのだが、そこは流石の鶴田浩二…説得力が半端ない。
荷物一つ持たない。
むしろ、男らしい。
大陸編はそう大した事もなかったのだが、おとよが鬼籍に入る。そん時の鶴田さんの芝居ったら…思い出しても胸が締め付けられる。
前作は恋物語の側面が多かったのだけど、今作は立派な仁侠映画だった。
飛車角の男っぷりは気持ちがいい。
言い回しというか、口上というか…美しく、強い。
作中で吉良常が「世知辛い世の中だ」とぼやく。
ラスト近く、時の政府の代理人に向かって「仁義が通らねえ」と啖呵をきる。
カタギの衆には寛大で優しく、渡世の人間には一切怯まない。
新年会の親分衆を前に、堂々とした貫禄は流石なのである。それでいて、飛車角自身の緊張感も忘れない。
本当に…現代ではとうてい通用しない生き方なのだけれど、羨望の眼差しと共に見惚れてしまう。
一本どっこの侠客だった飛車角が、テキヤの真似事をする。また、この時の鶴田さんが楽しそうで…和む。
けれども、荒らしにきた渡世人には躊躇なく暴力を振るう。このギャップがたまらない。
人物像を語るにあたり非常に優れたシーンだと思う。
今作で飛車角は死ぬ。
組を飛び出た子分に撃たれる。
「かまやしねえ、いつでも帰ってこい」と去っていく。
手には息子へのお土産のおもちゃ。
その背中に向かって放たれる凶弾。
チリン…
後ろを振り向かず、前へ進む。
何事もなかったかのように。
子分に撃たれた。子分が撃った。その事実を無かったことにしたかったかのように。
しかし、更に何発も撃ち込まれる弾丸。
チリリン…
絶命する飛車角。
耳に残るおもちゃの音色がなんとも儚げでせつなかった。
名匠・沢島忠氏に乾杯!
そして、キャストの紹介を読んで驚愕。
佐久間良子さんは二役やってた!
お澄はてっきり多岐川祐美さんだと思ってみてた。
すんげえ似てるなぁと、別人である事を疑わなかった…
よく似てるけど、微妙に違うなあと何度も思った。でも、実際は同じ役者…。お見事でした。
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