劇場公開日 1963年6月2日

「踊り子と旧制高校生の叶わぬ恋物語」伊豆の踊子(1963) まーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5踊り子と旧制高校生の叶わぬ恋物語

2025年2月12日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

2025年2月12日、第67回ブルーリボン賞授賞式の司会を吉永小百合と神木隆之介が担当したことから、吉永小百合の映画を観たかったので(自分でも単純と思った)。

当時、18歳だった吉永小百合が、16歳の踊り子「薫」を、高橋英樹は旧制高校の学生「川崎」を演じた。

物語は、大学教授の川崎が教え子からの結婚報告と仲人の依頼を受け、相手がダンサーだったので、若かりし頃を回想することから始まる。
ここまでがモノクロで描かれた。

回想シーンは一転してカラーになり、学生時代の川崎が伊豆を一人旅する道中で旅芸人と出会い、旅は道連れとばかり、薫に仄かな恋愛感情を抱きながら、下田まで寝食を共に行動していく。

けがれを知らない純粋無垢な薫は吉永小百合にピッタリ。
太鼓を背負った着物姿は本当に可愛い。

高橋英樹の川崎も、素直に気持ちを表すところはなかったものの、態度で薫に好意を伝えようとしていたのに好感を持った。

川崎が薫に仄かな恋愛感情を抱いたように、薫もまた川崎に恋心を持ち続けて旅をしていた。
早々と風呂から上がり、五目並べに興じるシーンは、観ているこちらもドキドキしてしまった。
また、下田に着いたら活動に連れてってと甘える仕草も、愛くるしさ満開だった。

身分の違いから叶わぬ恋で終わったのは初めから予想されたとは言え、埠頭で手ぬぐいを振り、涙を流す場面は切なかった。

そして、回想が終わり、モノクロの映像となって、教え子と恋人のダンサー(吉永小百合の二役)が街を駆け抜けて行くところを老齢の川崎が見送るシーンで映画は終わった。

映画は、舞台が大正であるため、社会の残酷な不条理が散りばめられていたことにやるせなさが残った。
例えば、旅芸人に対する差別(茶屋の主の態度、泊まる旅館の違い)、十分な手当てもされず若くして病気で亡くなった娼婦、沢の水で喉を潤す際の理など。
今の私たちには到底受け入れられないが、違う形で生きながらえているのではないかと考えてしまった。

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まーさん