劇場公開日 1962年9月29日

「これぞスタンダード名品」放浪記(1962) エイブルさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5これぞスタンダード名品

2018年11月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

笑える

興奮

シーンの繋がりが実に効果的。
例えば「エヴァ」の翼をくださいのように、また例えば「ゴッドファーザーパートスリー」のオペラのように、また例えば「天国と地獄」の犯人逮捕で流れるラジオのように、
マイナスなイメージの冷酷さを増幅させるための、陽気なBGMのような効果を、シーンのラストカットと次のシーンの最初のカットの落差が、無理なく生んでいる。

……といったように、芸術的作品たる作り手の、その意図が、観客ごときの自分だが、その自分に心地良い。
抑えられてなお強く芯を捉えるといった、作為の見せ方の、ストンと落ち着いて奇をてらわない手触り感が、観ていて実に小気味好い。我々はリアルな質感を観ているのではない、技術の仕草を観ている。
ただただ風景を詠んだ俳句を観ている感じの連結の小気味好さ。
観客は、興奮させるために作られた芝居を観たいのではなく、良いものを作るために作られた芝居を観て、それで各々勝手に沸々と興奮してくるものである。

近頃の作為が蔓延しきった作品にはなかなか無い妙味がある。

また、高峰秀子の身体は水を通った白玉のようで、汚しがいがあるのだ。

エイブル