ひとつのいのち
劇場公開日:1962年1月27日
解説
「花の歳月」の谷口葉子のオリジナル・シナリオを、「君恋し」の森永健次郎が監督した純愛ドラマ。撮影もコンビの藤岡粂信。
1962年製作/66分/日本
配給:日活
劇場公開日:1962年1月27日
ストーリー
松葉杖をついた一人の少女が、国道で高級車にはねられかけた。少女の名はあい子。幸いかすり傷一つ負わなかったが、何故か手帖を取り出すと素早く走り去った自動車のナンバーを書きとめた。数日後、山本と名乗る男が例の高級車の持ち主から二万円をおどし取った。彼はそのうちからわずか七千円をあい子の母妙子に渡しただけだった。働き手の夫を失って三人の子を抱えた妙子は、山本にそそのかされ小児麻痺のあい子に“アタリ屋”をさせ生計をたてていたのだ。区役所に勤めている姉のみち子も、山本の世話で就職できたことからそれに反対することは出来なかった。自分がかたわなために皆に迷惑をかけると思っているあい子は、悲壮な覚悟で月に一度か二度国道へ立つのだった。その頃盛り場はクリスマス・イブで大変なにぎわいだった。街の騒がしさに飽きた堂本史郎は、友達の車を借りて静かな国道へ走り出た。スピードを出して走る史郎は車にとび込んで来たあい子を避けることが出来なかった。意識不明のあい子を史郎は叔父の経営する長橋病院へかつぎ込んだ。翌朝あい子は、母や山本に言われた通り記憶喪失をよそおった。だが史郎の献身的な看護に愛に飢えたあい子は次第にほだされていくのだった。史郎も不幸だった。父を失いバーを経営する母には母親らしい愛情なぞ望めなかった。あい子と史郎の二人はお互いに歩みよるのだったが、そんな折あい子の弟一郎が肺炎になった。記憶喪失をよそおうあい子は、会いたがる弟にも会おうとしなかった。そして一郎は死んだ。妙子もさすがに自分のした行為の恐しさに目がさめる思いだった。自分がアタリ屋だったと史郎に打明けるあい子を史郎はやさしく慰め、足は必ず直してやると誓うのだった。