「脚本はこう書け」女の勲章 KIDOLOHKENさんの映画レビュー(感想・評価)
脚本はこう書け
この映画では、ある妙に頭の切れる男が次々に女たちと関係を持つ。
彼は一体何者なのか?何を狙っているのか?
その疑問がサスペンスとして上手く組み込まれており、観客を引き込み続ける力になっていた。見終わったあとに「ああ、そういうことだったのか」という驚きは特になかった。 しかし、言葉にしにくい “何かの塊” のような感情が心に残った。
脚本は見事だと思った。
そして、女たちがとても美しかった。
美しい女性は本当に良い。
特に京マチ子は美しく、変化していく女性の姿を実に見事に演じていた。
その変化を中心にシナリオを構成したことで、物語が成功したように思う。
この映画は「女」を描いた作品であり、男の不可解な行動がどういう意味だったのかは、結局どうでもよかったのだ。
男にのめり込む女。
男を利用しようとする女。
利用されていることが分かっていても関係を続け、ほかの女に嫉妬する女。
そういった出来事が何度も繰り返されていく。しかし主人公の心境は確かに変化していく・・・その中で主人公の心の動きを柱にしているため、男が何を考えているのか分からないというサスペンスが成功したのだろう。
この作品は、女性経験が豊富で女性心理をよく理解し、女性に優しい男にしか真の意味で理解しにくい映画なのかもしれない。
一見複雑に見える脚本も、分析してみると実に単純である。
丁寧な伏線。
細かいディテール作り。
クライマックスの盛り上げ方。
各シーンを丁寧に撮ること。
それらを積み重ねると、結果的に2時間の映画になる。
それにしても、『不毛地帯』『華麗なる一族』『暖簾』『白い巨塔』、そして本作。
原作者で小説家の山崎豊子は本当にすごい。
最後にもう一つ。
『白い巨塔』では橋本忍が「女たちの物語」をすべてカットして、見事な作品を作り上げた。
一方この『女の勲章』では、新藤兼人が「女たちのみ」を描いて傑作にした。
二人の巨匠脚本家の対照も、とても興味深かった。
