「【”NYの人は人間の生き方を忘れている・・。”巨額な遺産相続をした善良で、真の金の使い方を知る賢人たるシンデレラ男を巡る物語。ラストの法廷シーンは名シーンである事は間違いない作品である。】」オペラハット NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”NYの人は人間の生き方を忘れている・・。”巨額な遺産相続をした善良で、真の金の使い方を知る賢人たるシンデレラ男を巡る物語。ラストの法廷シーンは名シーンである事は間違いない作品である。】
■田舎町で工場を営むディーズ(ゲイリー・クーパー)は、母の兄にあたる大富豪センプルが自動車事故で亡くなった事で2千万ドルの遺産を引き継ぐことになる。
一躍時の人となった彼に会おうと新聞社や腹に一物を抱えた人々が押し寄せるが、彼は誰にも会おうとしない。
そんなディーズに新聞記者・ベイブ・ベネット(ジーン・アーサー)は色仕掛けで接近しようとする。
◆感想<Caution!内容に思いっきり触れています。>
・ディーズの”変人”と言われながらも、チューバを愛し、絵ハガキに詩を書く副業を持ちそれを楽しむ姿が良い。
ー 彼は、人の目は気にせずに、自身の信念に基づき生きる男である事が良く分かる。-
・そんなディーズに特ダネを取るために近づく新聞記者、ベイブ・ベネットはメリー・ドーソンと名を偽り、彼の生き様を目にする。
ー そこで、彼女が観たのは善良で、漢気が在り、聡明で、稚気をもある魅力的な男だった。最初は特ダネを取るためだったベイブ・ベネットはそんな彼に惹かれていき、ディーズも彼女に惹かれていくのである。-
■2千万ドルの遺産を引き継ぐことになった彼には、大富豪センプルの親類の愚かしき夫婦やセンプルの弁護士シーダーが同じく近づいてくる。シーダーやセンプルの会社の役員たちは会社の金を横領していた事を隠すために、ディーズを陥れようとする。
一方、ベイブ・ベネットはディーズの姿を見て、自分のしている事が嫌になり、新聞社を辞めるのである。
・ディーズもメリー・ドーソンの本当の姿を知り、人間不信になり故郷へ戻ろうとする。
ー このシーンの哀し気なゲイリー・クーパーの表情は特筆モノである。-
・そんな時に、彼の家に土地を奪われた貧しい農夫が銃を手に乗り込んできて、”世の金持ちたちが如何に貧しき人達から搾取しているか、冷たいかを切々と語るのである。
その言葉を聞いたディーズは故郷に帰る事を辞め、貧しき農民たちの為に遺産を使い農場を大量に購入して、3年後にはその土地を農民たちに渡すことを思いつくのである。
・それを知った愚かしきシーダーやセンプルの会社の役員たちは、ディーズの事を躁うつ病であるとして財産を管理する能力がない事を審問会で訴えるのである。
ー それに対し、ディーズは弁護士も雇わず、証言もせずに沈鬱な表情で黙るのみ。だが、そんな彼の姿を見て、ベイブ・ベネットは制止を振り切り証言台で如何にディーズが善良なる男かを涙ながらに熱弁するのである。-
■その姿を見たディーズは漸く、証言台に立ち自身の行いの変人さを認めつつ、”誰でもなくて七癖がある。”と裁判官や、博士や愚かしき大富豪センプルの親類の愚かしき夫婦の癖を揶揄った後に、シーダーの主張に対し、悉く反駁する。
そして、裁判官は”この法廷で最も正気な男”と宣言するのである。
その言葉を聞いた農民たちは狂喜乱舞し、そんな彼らを扉の外に追い出してディーズとベイブ・ベネットは、キスを交わすのである。
<今作は、人間の善性を心から信じる名匠、フランク・キャプラ監督の善良なる資質が見事に開花した作品なのである。
法廷シーンのラストの高揚感も素晴らしき、見事なる作品であると、私は思います。>