幻の殺意
劇場公開日:1971年4月15日
解説
平和で明るい生活を営んでいた家庭が、一つの事件をきっかけにガタガタに崩れ去ってしまう。結城昌治の「幻影の絆」を「新選組(1969)」の沢島忠が監督し、沢島忠と岡本育子が共同執筆した。撮影は「走れ!コウタロー 喜劇・男だから泣くサ」の岡崎宏三がそれぞれ担当。
1971年製作/100分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1971年4月15日
ストーリー
田代家は、高校の教諭をしている圭策と、美しく気品のある妻多佳子、高校一年の長男稔の三人家族である。稔は圭策の勤める高校に通学し、ラグビー部の有望株であり、学業も優秀な模範的生徒だった。圭策も学生時代はラグビー部の選手として活躍したことがあり、親子は共通の話題で固く結ばれ、田代家に関する限り親子の断絶などよそごとにすぎなかった。平和な日曜日、稔はガールフレンドの玲子と新宿にボウリングにでかけたが、その帰りに思いがけない光景にぶつかった。それは、多佳子がヤクザ風の男とアパートに入ろうとする姿だった。疑惑、驚き、恐怖、今にも崩れ落ちそうになる自分の身体を必死で支えた。それ以来、稔の態度は急変した。ラグビー部もやめるといいだし、そんな状態が幾日か続いた或る夜、稔の帰宅を待つ夫婦のところに、巡査が訪れ、稔の件で新宿署までの出頭を求めた。多佳子を家に残して新宿署にかけつけた圭策は、そこで稔が藤崎清三という新宿のヤクザを殺し逮捕されたことを知らされる。翌朝、新聞は派手に事件を報道した。犯行の目撃者までおり、かなりの証拠がそろっていたが、圭策にはどうしても信じることができず、友人の弁護士郷田を訪れ、事件の真相の追求と稔の弁護を依頼し自らも単独捜査を始めた。玲子を始めとする稔の友人、目撃者でソープランドに勤める山本直江、新宿のチンピラ小針安夫などにも会い、やがて一つの糸口として、殺された藤崎に三十前後の和服の女がいたことを突きとめた。一方、同じく事件を追求していた郷田から、謎の女が実は多佳子であり、稔も圭策の子ではないとの報告を受け、妻多佳子の隠された過去が次々と掘り起こされていった。その過去とは、圭策との結婚前に将来を誓い合った男が清三であり偶然の再会をきっかけに稔の実の父親である清三から脅迫されていたのだった。殺人事件のあった日も、清三の脅迫に応じるべく、彼のアパートを訪れ、そこでヤクザに殺される現場を目撃してしまったのだ。しかし、圭策の執拗な努力により真犯人は捕えられ稔の潔白は証明された。それと同時に多佳子は服毒自殺を計ったが、発見が早かったため一命は保たれた。親子三人の顔には、かつての平和な笑いが戻っていた。