白夜の調べのレビュー・感想・評価
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日ソ合作の観光映画に終わる文化交流のひとつ
日本の東宝とソ連のモスフィルムが共同で制作した作品。監督も「想い出の夏休み」のセルゲイ・ソロビヨフと西村潔が分担し、主演が作曲家役ユーリー・サローミンとピアニスト役栗原小巻のダブル主演の文字通り共作なのだが、結果的にはどっちつかずの何を描きたかったのか主張の弱い映画に終わる。主演二人の魅力がなく、両国の古都・京都とレニングラードの観光映画の印象しか残らない。ソビエトは、国家的規模で芸術にも力を注いでいる大国だ。映画、音楽、バレエなど西洋文化の中で水準以上のものを継承している。この作品では作曲家イサーク・シュワルツが映画音楽を担当して、冒頭から最後まで断片的ではあるがピアノ協奏曲が流れ、その悲哀の情感豊かな音楽がムードを高めてはいる。しかし、映画音楽としての重量感はなく、京都でこの協奏曲を録音するスタジオシーンの迫力も欠ける。 日本人から観ればソビエトの白夜の風景は美しく、エキゾチックな雰囲気の中それなりに物語を見詰められる。ところが京都のお盆の描写は在り来たりでつまらない。ソビエトの人が観れば、その反対になるのだろうか。背景と人物と恋愛意識が溶け込んでいない。モンタージュがなく、フォトジェニーでもなく、二国間の政治的で今日的な問題が加味されているでもなく、作品より二国間の文化交流に意味があったと言えるか。実際、昨年公開予定が、日ソの漁業問題発生で避けられ、今年漸く公開となった事情がある。政治に左右される映画産業の実態のひとつになってしまった。 1978年 2月4日 郡山松竹
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