劇場公開日 1976年11月13日

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「作られるべくして作られた名作!」犬神家の一族(1976) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0作られるべくして作られた名作!

2014年4月6日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

興奮

横溝正史が生んだ言わずと知れた名探偵・金田一耕助。
市川崑と石坂浩二のコンビで1976年に映画化した、邦画ミステリーの最高峰。
僕にとっては神映画の一つで、もう何度見た事か。

内容については今さら説明する必要もない。
多少カットされている部分はあるとは言え、さすがミステリー好きの市川崑(脚本の久里子亭はペンネーム)、実に上手くまとめている。
内容もさることながら、賞賛したいのはビジュアル面。

金田一耕助映画は本作以前にも映像化されていたが、1947年から1956年に作られた片岡千恵蔵による金田一耕助はスーツ姿の現代的な探偵で、1975年に中尾彬が演じた金田一耕助はジーンズ姿のヒッピー風。
よれよれの袴にボサボサ頭、掻くとフケが舞う…という原作のイメージ通りに映像化されたのは本作が初。
本作の金田一耕助像は後々にも多大な影響を与え、今日にまで至っている。
演じた石坂浩二もハマり役。
(尚、市川×石坂の金田一がブームの中、TVでは古谷一行が“横溝正史シリーズ”で金田一耕助を演じ、こちらも原作のイメージ通りでハマり役!)

かつて、本作を鑑賞した名匠ミロス・フォアマンは、うっとりさせられたという。
横溝正史が描いた日本特有のおどろおどろしく、哀しい世界観に、市川崑の華麗な映像センスが素晴らしいまでにマッチ。
怖ろしくも美しい…使い古されたこの言葉は本作の為にある。
ゴムマスクの下の大火傷、湖面から突き出た足…印象に残る映像作り。
素早いカット、遺産相続の席で登場人物たちが同時に喋るなど、市川崑ならではのユニークな演出も光る。
和服の裾が襖に挟まれヒュッと引っこ抜くお馴染みのシーンも勿論健在。
そして、大野雄二による哀切漂うテーマ曲も忘れてはいけない。伊福部昭の「ゴジラ」と並んで、日本映画史上に残る不滅の名曲!

以後シリーズ化されたが、やはり別格の一作!(叙情豊かな2作目「悪魔の手毬唄」も捨て難いが)
作られるべくして作られた名作!

2006年には市川崑自らの手でセルフリメイクもされた。
21世紀に市川×石坂の金田一耕助が見る事が出来、さらに贅沢過ぎる豪華キャストで、ご褒美のようなリメイク版。
正直賛否多いが、ラストカットだけは秀逸であった。

近大