「極上な愛のテーマ」犬神家の一族(1976) しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
極上な愛のテーマ
角川映画第1回作品。
金田一耕助(石坂浩二)シリーズ第1作。
DVD(2000年発売,スタンダード・サイズ)で鑑賞。
原作は既読です。
今ではすっかり定着した金田一耕助のスタイルは、映像作品では本作が初めて原作に忠実に描きました。風采の上がらない恰好ながら、人懐っこい笑顔と誰の懐にもスルスルと入り込む天性の才で事件の真相に迫っていく探偵ぶりは、江戸川乱歩の明智小五郎と違ってスマートさは無いけれど、非常に人間味溢れる探偵像だと思いました。初鑑賞の際、石坂浩二が醸し出すふわっとした雰囲気と少しとぼけているような演技が、金田一耕助のイメージにピッタリだなと感じました。
佐清の不気味なマスク。生首にすげ替えられた菊人形。青沼菊乃折檻シーン。湖面から突き出した青白い2本の足。…
市川崑監督が得意とする明暗の強調された映像が事件の舞台を恐ろしく、美しく引き立たせ、強烈に描き出していました。
画面を彩る魅力的な女優陣も素晴らしい。
三姉妹を演じた高峰三枝子、草笛光子、三条美紀の、怨嗟と妄念にとりつかれた人間模様はとても迫力がありました。
三姉妹が凄まじいだけに野々宮珠世の純潔が引き立つ。体現した島田陽子の可憐さも良く、佐清との恋愛模様も美しい。
母から子への愛に貫かれた事件の真相がとにかく切ない。
様々な愛のカタチが事件の様相を複雑怪奇にしていました。
愛とは時として呪縛となり得るくらいに強い想いであり、容易く人を盲目にする。しかし愛無しに人は生きられない。
そんな愛の謎を解きほぐしていく金田一耕助の活躍に魅せられ、極上のミステリーに浸れる本作は色褪せぬ魅力だらけ。
普遍的な愛に彩られた物語は観る度に共感し考えさせられるし、未来永劫人々を魅了していくのだろうなと思いました。
[追記(2021/12/19)]
角川映画祭で4Kデジタル修復版を鑑賞して―
スクリーンで鑑賞出来たことが嬉しかったです。
澄み切った映像でした。市川崑監督の仕掛けた鮮烈なビジュアルのひとつひとつがくっきりはっきりしたことで、その素晴らしさをより一層感じることが出来ました。
[以降の鑑賞記録]
2020/06/02:アマプラ(シネマコレクション by KADOKAWA)
2021/12/19:シネ・リーブル梅田(4Kデジタル修復版)
2021/12/23:Blu-ray(4Kデジタル修復版)
2021/12/28:Ultra HD Blu-ray(4Kデジタル修復【HDR】)
2023/11/10:YouTube(角川シネマコレクション,プレミア公開)
2023/11/19:YouTube(角川シネマコレクション)
※修正(2023/07/09)