大人の見る絵本 生れてはみたけれどのレビュー・感想・評価
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ピアノの生伴奏と活弁付きモノクロ無声映画
昭和七年公開のモノクロ無声映画、活動写真弁士大森くみこさんの活弁とサイレント映画ピアニストの柳下美恵さんのピアノ生演奏つきで観てきました。
大森さんの熱い活弁には感心しました。アドリブで笑いを誘ったり、ちょい役で出ていた若かりし頃の笠智衆の登場場面では何気ない突っ込みを入れたり。活動写真弁士ってなかなか興味深い仕事であり、また重労働です。サイレントピアニストは場面場面でどのような音を流すべきか考えながらアドリブ(なのかな?)でピアノを演奏する仕事でこれも凄いですよね。弁士とピアノ生演奏付きの無声映画、これ病み付きになりそうです。
台詞なしの演技、子供たちも含めて皆生き生きとしていて(活弁とサイレントピアノの助力もあってですね)ホロリとさせられたり、考えさせられたり、さすが評判の名作でした。父を尊敬する息子たちがサラリーマンとしての父の現実、立場(上司にペコペコしたり媚を売ったり)を見せつけられショックを受けるという話なのですが、かつて息子でありそして父親でもあった僕は自分と重ね合わせて考えさせられたり懐かしく思ったり。時代は変われど何も変わらないものってたくさんありますね。
余談ですが、子供たちがたくさん出ていたので、第二次世界大戦で亡くなった方もいるんだろうななんて鑑賞中思ったのですが、観賞後にスマホで確認したら皆さん長生きされていたようで一安心しました。
日本サイレント映画の最高峰‼️
小津安二郎監督のサイレント期の代表作であると同時に、日本のサイレント映画の最高作だと思います‼️この作品は戦災を免れて、ほぼ完全な形で現代でも観ることができます‼️東京の郊外へ引っ越してきたサラリーマンの息子である小学生の兄弟が、近所の子供たちのガキ大将となる。ある時、お父さんが重役の前でペコペコするのを見てショックを受ける。自分たちは重役の子供を子分にしているのに、お父さんは情けない。父親を軽蔑し、反抗する兄弟。だが哀れなガキ大将は、飯を食い、学校へ行くしかない・・・この作品は子供が取材し、皮肉を込めて製作した「大人のための絵本」‼️父親が上役のご機嫌をとるため、必要以上に頭を下げる‼️階級とお金と忖度がつきまとう社会に対し、懐疑心と不信感を抱き始める。我々大人にとっては当たり前な大人の事情、それに対する子供たちの疑惑‼️前半はユーモラスな子供たちの世界の描写‼️学校をサボったり、ケンカしたり、仲良く遊んだり、本当にリズミカルで躍動する画面はサイレントであることを忘れさせてくれます‼️後半は一転して父親をなじることで大人の世界を告発する子供たちのシリアスな展開へ‼️全編を通して印象的なのは芸術的と言っていい字幕の使い方ですね‼️特に子供たちが父親をなじるシーンで矢継ぎ早に挿入される字幕のリズミカルさはホントに素晴らしい‼️当時は弁士の方の活弁が入っていたと思うんですけど、活弁無しでも充分リズミカルで躍動的‼️まるでアクション映画のようなテンポの良さで1時間30分がアッという間です‼️ラスト、大人にちょっとだけ近づいた子供たちのセリフ「お父ちゃん、お辞儀したほうがいいよ」‼️ホントに微笑ましいです‼️爽やかです‼️親と子の愛情と少しつらい現実も、この日本という国のひとつの風景として、淡々と風刺を込めて描いているところが、小津安二郎監督って天才なんだなぁと思わせてくれる所以です‼️
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