劇場公開日 1985年8月3日

「相米慎二と石井隆のタッグによる異色ポルノ」ラブホテル たけはちさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5相米慎二と石井隆のタッグによる異色ポルノ

2025年5月3日
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鑑賞方法:DVD/BD

長く見逃していた、相米慎二と石井隆のタッグによる伝説的な相米異色のにっかつロマンポルノ。
寡黙な寺田農も良いが、速水典子の演技に惹かれる。やはり薬師丸ひろ子、斉藤由貴といった、若い女優の演出に長けた相米の腕が遺憾無く発揮されている。
定番の長回し演出も冴えていて、とりわけ入水自殺を図る埠頭のシーンは、斉藤由貴主演の傑作「雪の断章」を彷彿とさせる名シーンで、この時期の相米の手腕が伺える。
ただ名作には違いないが、数ある傑作をものしてきた相米慎二の作品として考えると、若干の不満は残る。せっかくロマンポルノに挑んだのに、官能性としては踏み込みが足らず、同じ石井隆の名美シリーズの中なら「死んでもいい」の方が、サスペンスとしても主人公達の関係へののめり方としても優れているように感じる。むしろ相米映画における官能性は、「セーラー服と機関銃」での薬師丸ひろ子の這いつくばるシーンや、破綻した異常な傑作「ションベン・ライダー」における原日出子の緊縛シーン等のが緊張感がある。
とはいえ、相米慎二の映画に余計な詮索をするのも野暮と言うものだろう。山口百恵やもんたよしのりの「歌謡曲」が、全体のアナクロな扇情性を彩る佳作として、密やかな愛に耽る速水典子(最近の女優なら河合優実か)と寺田農の関係性に90分弱の時間をを捧げるのが正しい見方だと思う。

たけはち
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