着かない港
解説
イギリス劇壇の長老の一人でトーキー以来本邦未紹介のマシスン・ラングが「白蛾」「電話新撰組」のコンスタンス・カミングスと共に主演する映画で、「沙漠の花園」のW・P・リプスコームが自らアンガス・マクフェイルと共作したストーリーを脚色し「戦ふ民族」のミルトン・ロズマーが監督に当たり、「血に笑う男」のフィリップ・タンヌラが撮影したもの。助演者は「十三日の金曜日」のエドモンド・グウェンを筆頭に、「暁の総攻撃」のアンソニー・ブッシェル、「都会の雷鳴」のナイジェル・ブルース、「ダニー・ボーイ」のドロシー・ディクソン、喜劇俳優として名のあるマックス・ミラー等である。
1933年製作/イギリス
原題または英題:Channel Crossing
ストーリー
イギリス財界の巨頭ヴァン・イーデンは最近企てた或る事業に、資本の一部として多額の偽造証券を配給した。もしこれが暴露すれば彼は破滅するのだ。この難局を打開すべく彼はフランスに投資している資金を回収しようと、イギリス海峡横断の定期船カンタベリー号に乗った。ヴァン・イーデンは女秘書マリオン・スレイドを伴っていた。彼女にはピーター・ブラッドリーという婚約者があり、ピーターはマリオンにフランス行きをやめてくれと頼んだのであったが、マリオンは仕事に干渉するな、と言って拒絶した。嫉妬に常軌を逸したピーターは後を追って乗船し、ヴァン・イーデンの船室に忍び込んだ。彼が聴き耳を立てているとは知らず、ヴァン・イーデンは経済的危機に立っていること、並びに彼のマリオンに対する思慕を、マリオンに打ち明けた。ピーターは矢庭に跳出して、秘密を暴露してやると叫ぶ。マリオンは彼をなだめようとしたがピーターは猛り狂った。自己の秘密の暴露を恐れたヴァン・イーデンは立篭る濃霧の甲板にピーターを誘い出して海中に投げ込んだ。救助隊の数時間の努力でピーターは人事不省のまま引き揚げられた。彼の弱った心臓の機能を蘇らすには或る強心剤が必要だったが、生憎船中には無かった。その薬を所持する唯一人の男はヴァン・イーデンだった。マリオンの切なる願いに彼はその薬を與えた。ピーターは救われた。同時にヴァン・イーデンは自殺して果てていた。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ミルトン・ロズマー
- 脚色
- W・P・リップスコーム
- 原作
- アンガス・マクファイル
- W・P・リップスコーム
- 台詞
- シリル・カンピオン
- 撮影
- フィリップ・タンヌラ
- 製作担当
- グラハム・カッツ