「木賃宿の人々の群像劇」どん底(1936) mittyさんの映画レビュー(感想・評価)
木賃宿の人々の群像劇
ロシア文学で有名な戯曲「どん底」、原作は読んだことないけれども、貧困層のプロレタリアート!みたいな暗い作品だと思い込んでましたが、意外にも、木賃宿の人たちはお酒や歌で毎日が楽しそうでありました。
男爵(ルイ・ジューベ)が賭け事で公金を使い込み、そのおたずねのシーンが冒頭に来ますが、この男爵、ペペル(ジャン・ギャバン)の次の主人公といってもいいぐらい、キャラクターが魅力的で存在感がありました。賭けでお金を使い込んだあげく、最後の賭けにも挑戦。しかしここでも破れてどん底へと落ちるのですが、その後、ぺぺルと友情で結ばれ木賃宿に住むようになります。宿の人たちにまじってゲームなどしてすぐに馴染んでいました。
ペペルは家主コスティリョフの妻、ワシリーサと恋仲でもあるようなのですが、ワシリーサの妹ナターシャに惚れるようになります。ラストはナターシャと新しい生活をスタートするような予感が漂ってました。
ぺぺルがワシリーサと別れ話するシーン。ワシリーサに「きれいだ。色気がある。でも心ときめいたことがない。愛おしいと思ったことがない。やさしさがない」と言い放つところが印象的。動物を手なづけるように包み込んでくれる女性を望んでいるという。なのに、ペペルが選んだナターシャには、柔らかさ、優しさがあまりないのでちょっと違和感ありました。
ジャン・ギャバンが若くてかっこいいです。32歳の時だそうですが、貫禄はありますね。
賭場で女性が歌います。世相を表しています。
♪♪♪
ブルジョワは羽布団にくるまり
ネズミは通りをうろつき
強盗は仕事に出かける
銃やナイフを忍ばせ、こっそりと
どんな仕事にも適した時間がある
犯罪に生き、盗みを糧に生きるのは
楽しくないことよ
憐れな男たち
♪♪♪