モスコウの一夜

解説

「人生謳歌」「O・F氏のトランク」と同じくアレクシス・グラノフスキーの監督作品で、原作は「アトランティド」のピエール・ブノアが書卸し、台詞は、「別れの曲」のジャック・ナタンソンが執筆、脚本は「トト」のヘルマン・コステルリッツが担当、撮影は「未完成交響楽(1933)」「たそがれの維納」のフランツ・プラナーがルイ・ネの協力を得て担当した。映画は「にんじん」「ゴルダー」のアリ・ボール、「外人部隊(1933)」のピエール・リシャール・ウィルム、「巴里祭」「春の驟雨」のアナベラ、舞台女優のスピネリーの共演になるもので、その他「ル・バル(1931)」のジェルメーヌ・デルモズ、ロジェ・カール、ジャン・トゥールー、ポール・アミオ、ダニエル・マンダイユ、等が助演する外、パリオペラ座のポデスタとティノ・ロッシとの二歌手並びにアルフレッド・ロードのジプシー・オーケストラとドミトリウィッチのジプシー合唱団も出演している。作曲はカペルとジュルマン、モーリス・ジョーベールが指揮した。

1934年製作/フランス
原題:Les Nuits Moscovites

ストーリー

一九一六年のロシア、ヨーロッパ中に黒い煙が覆いかぶさっていた時、モスコウの衛戌病院に傷ついて戦地から送還されたイグナトフ大尉は、特志看護婦として此処に勤めていたコフリーヌ将軍の忘れがたみナターシャを恋する様になった。しかしナターシャには母の選んだ心すすまぬ許婚のブリュコフという富める穀物商人がいた。ブリュコフは人のいい大男で、彼女を本当に体まで投げ出して愛していた。しかしナターシャは若くて元気一杯のイグナトフ大尉を知るに及んで初めて恋を覚えた。けれども、大尉は彼女が婚約の身と知ると、去って参謀本部の重要な位置に着いた。この前任者ペトロフスキー大尉はスパイのアンナに操られて、事の発覚したときに自殺したのである。イグナトフ大尉にもアンナの手は延びた。その内に、ある晩、イグナトフとブリュコフとは互いの敵意がつのりクラブで骨牌を闘わし、大尉は五萬四千ルーブルという大金を負けた。一介の軍人としてそんな大金が都合つく筈はない、大尉は軍人の名誉のために自殺しようとしたが、最後の想い出にと華族会館での舞踏会に赴き、ナターシャに別れをつげようとした。ところが、そこで彼女から己への恋を打ち開けられ、再び生きる望みが生じ、アンナのいうままに彼女の手を通じて金を借りようとする。ところが、アンナがその代償に機密を教えろというので、彼は初めてその正体を知り断然拒絶した。だが、その時は既に遅く、彼は売国奴の嫌疑で逮捕され、軍法会議に廻された。そして大尉の住居の家宅捜査から五萬四千ルーブルの大金の受け取りが発見され。イグナトフ大尉には益々嫌疑の蔭が濃くなる。この出所が問題となったのであるが、大尉はそれを払った覚えがない、実はナターシャが彼の危うきを知ってブリュコフに願い、彼からその受取を送らせたのである。で、ブリュコフが証人として召喚された。ブリュコフはナターシャを奪った男としてイグナトフを恨んでいる。彼が偽証しさえすれば大尉を死刑にすることが出来るのである。だが、ブリュコフは神を信ずる男であった。彼には偽りの証言が出来ない。彼は憎い男を己の口で助けた。その上に、ナターシャをイグナトフにやってしまった。だが、今、ブリュコフは限りなく淋しいのだ。彼は自棄になってジプシーの歌と音楽と酒の中に、己を没入して忘れようとする。けれど、その眼からは大きな涙が流れるのだ……

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