求婚
劇場公開日:1948年11月
解説
「不思議なヴィクトル氏」「舞踏会の手帖」に渋い芸を見せ、昨一九四七年他界したレイミュが主演する映画で、「望郷(1937)」と同じくアシェルベの原作の映画化、脚本と台詞は「泣き笑い千法札」のイヴ・ミランドが書き、「暁に帰る」「背信」のアンリ・ドコアンが監督に当り、「望郷(1937)」「我等の仲間」のジュール・クリュージェが撮影し、「奥様は唄に首ったけ」のジョルジュ・ヴァン・パリスが作曲した。助演者は「どん底」のシュジ・プリムを始め、「犯人は二十一番に住む」のピエール・ラルケ、「最初の舞踏会」のシャルル・グランヴァル、ジョルジュ・コラン、ジャック・ボーメー、アレグザンドル・リニョオ其他の面々である。
1946年製作/フランス
原題または英題:Le Bienfaiteur
劇場公開日:1948年11月
ストーリー
ここはのどかな片田舎ベルフルールの町である。近ごろこの町に移り住んでいるムリネさんは、えらいお人だと寄るとさわると大評判である。よほどの金持らしく、町のこと町人のこととなると、過分の寄附を惜しまない。町長さんをはじめ、町のおもだった人たちが、ムリネさんは大したものだと折紙をつけている。金を出すのを惜しまないだけではない。町で手こずっている酒飲みの半気狂いを、ムリネさは取り押えて心を入れかえさせ、その男自らムリネの宅にお礼に来たくらいである。ムリネは町の慈善女学校の校主をしている美人後家ベルジェ夫人に、少からず思い召しがあるらしく、夫人にこわれると一万フランの寄附をして、後援会長になった。夫人もやさしいムリネの心持をうれしく思い、彼の求婚を承知した模様である。ある夜ムリネがどう球をしていると、パリから電話がかかって来る。電話がすむとムリネは、伯父が危篤らしいといい、早速パリへ赴いた。パリの目抜きの大通りにある宝石商に、昼休みで店員が出払って店主ひとりしかいない時、強盗団が飾窓を破ったが、その時はムリネが店内で指輪を買うといって、店主から宝石類を見せてもらっていた。その騒ぎの中でムリネの姿は消え失せ、高価な宝石も沢山紛失した。ムリネはひところパリを震がいさせた強盗ギュイヨの、世を忍ぶ姿であったのだ。しかしベルジェ夫人に真実ほれて、平和な余生を送る気でいるムリネは、これを最後にどろ棒か業の足を洗うことに決め、その夜児分たちを集め、宝石を分配しギャング解散を宣告する。ムリネは更にベルフルールの慈善女学校から女生徒を誘かいした、税務署長、息の子が色々の盗みをしていることを知り、盗品と十万フランの紙幣を取返す。それをそれぞれ持主にこっそり返却したので、町ではこの不思議が大評判となる。パリ警察庁では宝石強盗事件を解決すべく、ピカアル警部が専任となる。警部はギュイヨ一味に見当をつけ様子をさぐって、一味の一人が、ベルフルール町のムリネという人物に手紙を出したことを知る。ピカアルはベルフルールに出張し、町長やムリネと近づき、ムリネのアリバイがあいまいなことを知り、彼が婚約のしるしにベルジェ夫人に与えた指輪が、例の盗品であることを突とめる。ムリネは自白しなかったが、ベルジェ夫人に対決させるという警部の言にまけ、彼女には正体をかくしてくれと頼んで縛につく。彼が引かれて行く時、例の気狂いが放火して鉄砲をふり回し始める。ムリネは警部に願って火中にとび込み気狂いを取押える。しかし煙の中で遂に焼死してしまう。ベルフルールの町人は慈善家ムリネさんの非業の死をいたんだ。
スタッフ・キャスト
- 監督
- アンリ・ドコアン
- 脚本
- イヴ・ミランド
- 原作
- アシェルベ
- 台詞
- イヴ・ミランド
- 撮影
- ジュール・クリュージェ
- 美術
- セルジュ・ピメノフ
- 作曲
- ジョルジュ・バン・パリス