汽車は東へ行く

劇場公開日:

解説

監督ユーリー・ライズマンはソ連におけるもっとも古参の作家ヤーコフ・プロタザーノフの助手として映画生活に入り「輪」「強制労働」(二八年)「渇えし大地」(二八年)いらい「飛行士たち」「最後の夜」「ひらかれた処女地」等を発表、四二年には「マーシェンカ」でスターリン賞を獲得、四五年からは記録映画に移り「対フィンランド講和の問題について」「ベルリン」と連続スターリン賞の栄誉を担っている。この作品は彼の芸術映画への復帰作であり、シナリオは批評家レオニード・マリューギンの筆になる。カメラはイーゴリ・ゲレインとアルカージイ・コリツァトイの共同であり、ともに映画経歴二〇年以上の技術者であり、とくにゲレインはテクニカラー撮影の権威である。作曲のチーホン・フレンニコフは現在作曲家同盟の書記長であり「コーカサスの花嫁」の作曲で知られている。なお彼はこの映画では水兵にふんして出演している。主演のリージ・ドラノフスカヤは国立映画大学の卒業製作に「エルグノフ中尉事件」に出演してみとめられ、レオニード・ガリスは舞台俳優であり、映画には初出演である。なお演奏は映画省交響楽団である。

1948年製作/ソ連
原題:The Train Going East
劇場公開日:1949年6月

ストーリー

一九四五年五月九日--大戦の勝利を祝ってモスクワの町々はお祭り騒ぎであった。空には花火が無数にうちあげられ広場は踊り狂う人々で一杯であった。この賑やかな首都をあとに大陸横断列車はウラジオストックに向けて出発した。同じコンパートメントに偶然に同室したのは、チミリヤーゼフ大学を卒業して新任地に向う若い婦人農学者ソコローワとバルチック艦隊から太平洋艦隊に転勤して行く海軍士官ラウレンチェフであった。列車がモスクワを出発した最初の夜、車中でも乗客一同は勝利を祝って食堂車に集り楽しい戦勝の記念日を過ごした。ラウレンチェフと彼の同僚ベリョージンの間では彼女の事が話題となったが、美ぼうのソコローワは、ふとした言葉の行き違いから歌手か女優であると誤解され、勝気の彼女はその上人妻であるとさえ言ってしまった。翌朝、とある停車駅で駅前の市場へ買物へ出た彼女は、発車時間に気がつかず呼びもどしに行ったラウレンチェフとソコローワの二人は列車にとり残されてしまった。駅で人々に暖かく慰さめられたが、二人にとっては急ぐ旅行だけに何とかして旅行を続けなければならないと思い、やっとのことでこの町の郊外に建設されている工場が、東行の定期飛行便を持っていることが判り、ラウレンチェフはその工場へ行くこととなった。工場へ着いたラウレンチェフは丁度そこに来合せた視察団長と間違われたりしたが、やっと誤解をといて、二人は飛行士の好意で東行の飛行機に同乗出来ることとなった。建設地帯を過ぎて山岳地帯へ入ったころ濃霧のためその飛行機は不時着をしなければならなかった。林の中でたき火をしながら世を明かす時、飛行士に夫婦であると偽った二人は気不味思いをしなければならなかったが、二人の間に互いに燃えて来る恋心を押さえることは出来なかった。車中で人妻であると言った言葉をラウレンチェフは忘れ得ず、彼女も又彼が妻のある身と思い何事も言い得ずに夜を明かしてしまった。飛行機で相当の距離を回復した二人は、通りかかった農夫の馬車に頼んで、最寄りの駅まで運んでもらうこととしたが、途中でコルホーズのトラクターが故障しているのに会い、時間を食って遂にトラクター・ステーションでさらに一泊を重ねねばならなかった。朝、支線の駅から乗車した二人は離れの車室でお互いを思いながら幹線駅への旅を続けて行った。ラウレンチェフの彼女に対する愛情は、この間にも進んで行ったが、モスクワを発った夜の会話の行き違いはどうにも清算されずお互いに誤解が解けぬままにチタで一日後の大陸横断列車に乗り移ることができた。明朝はいよいよウラジオストックに列車は着く。二人は初めてお互いの愛情を訴えた。早朝、汽車はウラジオストックの駅頭に着いて長い旅の終りを告げたがそれは二人にとって新しい生活と愛の初まることであった。

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