二つの顔(1947)
劇場公開日:1949年10月
解説
「女ざかり」のジャン・ドレヴィルが監督した一九四七年度のジャック・ロアフェルド作品で、「海の牙」「どん底」のジャック・コンパネーズがストーリーを書きおろし「流血の港」「ラ・トスカ」のニーノ・フランク及びシャルル・アンベールと三人で脚色し、台詞は「海の牙」「北ホテル」のアンリ・ジャンソンが書いている。撮影は「女ざかり」のアンドレ・トーマが指揮し、音楽は「乙女の星」のルネ・クロエレックが作曲した。主演は「旅路の果て」「北ホテル」「犯罪河岸」のルイ・ジューヴェで、善悪二役を演じ、「犯罪河岸」「ラ・ボエーム」のシュジ・ドレールが相手役で、新顔のレオ・ラパラ、ジャン・ジャック・デルボー、アネット・ポアーヴル、「悲恋」のジャーヌ・マルカン等が助演する。
1947年製作/フランス
原題または英題:Copie Conforme
劇場公開日:1949年10月
ストーリー
詐欺、かごぬけ、窃盗、強盗が、パリを中心に近郊一帯にかけて、ひんぴんと起るのに、警察は業をにやし、民衆は恐怖におびえている。少しも証拠を残さない巧妙な犯罪であることと被害金額が巨大な点において、これ等の異った犯行は一致している。これはパリ市中の目ぬきの通りで写真屋をしているイスモラが首領であった。そして児分のオスカーという腕っこきが巧妙に立回ったからであった。さてこんな大胆な犯罪が横行しているパリには、一方ではまるで小心のお人よしの男もいる。デュポンという独身のサラリーマンがその一人である。彼は身に覚えのない帳簿カイザン、社金横領のかどで取調べを受けると、すっかり落胆して了った。もう前科者扱いをされ、信用はなくなったのだという、恐迫観念に囚われたのである。その小さい新聞記事を見たのはイスモラだった。他人の空似というか、デュポンはイスモラに瓜二つではないか。イスモラは早速オスカーに旨を含めてデュポンを見張らせた。デュポンの正直さに好意をよせている若い女シャルロットの慰さめも、彼には頼りない気がした。イスモラが見当をつけた通り、デュポンは河に入って自殺しようとしているのを、オスカーは呼びとめた。イスモラはデュポンを監禁し、その所持品を河に捨て自殺を装わせた。新聞には小心男の自殺の記事が載った。それからイスモラの口説きと脅迫が始まり、デュポンはイスモラの替玉を勤めることを承知させられた。写真師イスモラとしてデュポンが客に接しているとき、本物のイスモラはゆうゆうと悪事を働く寸法である。偽イスモラが本物のイスモラと入れ替って、ナイトクラブで情婦コラリンヌとシャンパンを飲んでいる間に、本物は何処かで「仕事」をすませる。市民の恐怖、警察の焦そう、新聞の悪口は、旧に倍したことはいうまでもない。デュポン君のイスモラ振りは一向にさえなかったが、コラリンヌは暴君のようなイスモラよりも、女に深切な偽イスモラにひかされる。何も知らない彼女は、やさしくなる時の男が好きなのである。そして生れて初めて女に愛される身になったデュポンは、いつかコラリンヌを真剣に愛するようになった。オスカーは偽物が立場を利用して親分の女にキスしようとしますぜと、注進に及んだ。正直者のデュポンは到々アリバイ稼業がいやになって、脱走を決意してコラリンヌと別れを惜しむ。いよいよ怪しいとイスモラはデュポンを詰問すると窮鼠猫を食む形勢と成る。親分危うしと児分が射殺すると、それは本物のイスモラだった。そして刑事に凡てを告白して絶命した。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ジャン・ドレビル
- 脚色
- シャルル・アンベール
- ジャック・コンパネーズ
- ニーノ・フランク
- 原作
- ジャック・コンパネーズ
- 台詞
- アンリ・ジャンソン
- 製作
- ジャック・ロアフェルド
- 撮影
- アンドレ・トーマ
- 作曲
- ルネ・クロエレック