O・F氏のトランク

解説

処女作「人生謳歌」で認められた、元モスコーユダヤ劇場の主脳者アレクシス・グラノフスキーの第二回トーキー作品で、ドイツの風刺作家として聞えているレオ・ラニアと監督グラノフスキーが共同して書卸したもので、自ら大人の為のお伽噺と断ってある。出演者は「メトロポリス」のアルフレッド・アベル、「M」のペーター・ローレ、ハラルト・パウルゼン、ルドウィッヒ・ストーセル、ヘルタ・フォン・ヴァルター、へディー・キースラー、マルゴ・リオン、ハドリアン・ネット及びベルンハルト・ゲツケという顔ぶれである。キャメラは「制服の処女(1931)」「巴里-伯林」のライマール・クンツェ及びハインリヒ・バラッシュで、作曲は「カラマゾフの兄弟」のカロル・ラトハウスである。

1931年製作/ドイツ
原題または英題:The Trunks of Mr.O.F Die Koffer des Herrn O.F

ストーリー

虫眼鏡で二時間も地図を探さなければ発見出来ないような小っぽけな中央ヨーロッパの町オステンドは、世界の動きから全くかけ離れて眠ったように静かに横っています。何しろ町のモットーが一歩進む前に二歩退けという位ですから、町の目抜きの通りには豚の児が悠々と散歩している仕末です。ところがある日のことオステンドの町にたった一つしかない旅宿グランドホテルに、O・Fと頭字の入った十三箇の立派なトランクが届けられ、最上の部屋六室頼むという電報が舞込みました。これは大変なお客様だとホテルの主人は大恐悦でテンテコ舞して、一夜のうちにO・F氏を迎えるにふさわしい小ざっぱりしたホテルに仕立てます。すると両隣の床屋さん、仕立屋さんも、店の模様替えをし看板を塗りかえます。やがて町中がよるとさわるとO・F氏の噂で持ち切りになります。するとこれに眼を付けたのが町の新聞記者とその友人の若い建築技師です。新聞屋はO・F氏はオスカー・フロットと云う百万長者で自分の友人だと云えば、技師はO・F氏はこの町に投資に来るんだと人々をおだて上げ、市長さんを担ぎあげてO・F氏の意に添う様にと都市計画を立てドンドン仕事を始めたので今まで死んだ様に静かだったオステンドは大変な活況を呈します。新聞屋はO・F氏の旅愁を慰める為とホテルの主人を口説いてジャズバンドやハダカ踊りのダンサー等を招聘させます。その女達にあふられた土臭い女房連も急にお化粧に身をやつして亭主を驚かすようになったので、町は人口も殖え、世界中が不景気で腐っているのに景気が盛んになる一方です。ところが肝心なO・F氏は待てど暮せどやって来ません。市長とホテルの主人はこの問合せを受けて困った揚句、ホテルの主人は贋のO・F氏を仕立て、歓迎の式だけはホテルのバルコニーから答礼させ、あとは病気に付き面会謝絶と何となしに誤間化して、あとは一同を仕事の方に熱中させてしまいました。事実オステンドの人々は、町が夢のように盛大になってしまった今日、O・F氏の事などは次第に忘れ勝ちになり、O・F氏の為に、と云って働いたのか、何時とはなしに我等のオステンドの為に、というモットーに変っていました。ですから町は益々発展する許り、何時の間にか名所案内の遊覧自動車までも出来る仕末、その発展振りが余り目醒ましいので、世界経済会議でもオステンドを会議開催地に指定するようになりました。この原因は、運送会社のタイピストがベルギーのオステンドへ送るレヴューの花形の衣裳トランクを、綴りを一字違えた為にドイツのオステンドに行ったのでこんな結果になったのでした--さて、こんな具合で世界の景気が出てくれれば大変結構なんですがね--。

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