君と暮せば

解説

「都会の哀愁」「春の驟雨」のパウル・フェヨスが監督した作品で、主役は「暁の翼」「春の驟雨」のアナベラと、「ヴェニスの船唄」「北京の嵐」のグスタフ・フレーリッヒが演じている。監督フエヨスが自らの原案を書卸したストーリーをアドルフ・ランツが脚色したもの。撮影はアドルフ・ヴァイトが、音楽はフェレンツ・ファルカスが、夫れ夫れ担当した。助演者は「春の流れ」「ウィリアム・テル(1933)」のハンス・マール、「真紅の恋(1933)」のパウル・オットー、「ハンガリア夜曲」「春のパレード」のアニー・ロザー、ワルター・ブラント、ヤロ・フユルト等の面々である。

1933年製作/ドイツ
原題または英題:Sonnenstrahl

ストーリー

大都会の夜である。霧に煙っている川向を見詰めて、河岸に佇立している男がいる。ハンスという失業した自動車運転手である。飢えて、疲れきって、希望はなく、もう生活苦に戦い抜く勇気も失せた。いっそ死んでしまったら……と考えた時、突然、助けて助けて、という女の叫びが聞こえる。無我夢中でハンスは水に跳び込んで、溺れかけた女を救った。女は若く美しかった。この美しい乙女を死なせてはならぬ、と思った時、ハンスは自分自身死を想った卑怯さを恥じた。この哀れなアンナを守って、戦えるだけ戦って見よう。ハンスは新しい勇気が湧いて来るのを感じるのだった。こうして、アンナとハンスの更正が始まった。清い恋のよろこびは、苦しい生活の戦いを明るくする。二人は凡ゆる機会を逸せず働くのだ。遊園地の射的場でハンスは黒人に扮して立つ。客はこの生きた標的に球を投げつける。近いところでアンナは風船玉を売っている。二人は時々顔を見合わせて微笑する。すると疲れも忘れるのである。一人の悪戯小僧が球の代わりに石を投げたのがハンスの頭に命中し、ハンスは昏倒する。驚いたアンナは風船玉をお留守にして駈寄って介抱する。色さまざまの風船玉は群集の喝采のうちに空高く舞い上がる。二人は失業したが、薬屋に一緒に雇われる。アンナは店頭で髪洗粉のマネキン、ハンスは広告の看板担ぎだ。アンナは人にジロジロ見られたり、目に水が入ったり、辛いがハンスの目を見ると心も軽い。或日、散歩に出た二人は協会の前にさしかかると、丁度結婚式があって、見物人に押され押されて会堂の中に入る。牧師が花嫁花婿に向かい、死ぬまで変わらぬ愛を誓うか、と型の如く問うと、ハンスとアンナは自分達が訊かれた気で「はい」と答える。神の前に愛を誓った二人は、教会を出ると旅行案内所に入って、海や山の広告を眺めて新婚旅行へ行った気持ちになるのだ。こうして苦しみと悦びの生活を繰り返した末、ハンスは或る銀行の配達夫となり、月賦で自動車を買い入れ、自動車運転手の職に再び就く段取りが出来た。二人が悦び合ったのも束の間、運わるくハンスは或日電車の軌道内で遊んでいる子供を助けてやろうとして、自分が電車に轢かれて負傷し、入院しなければならなくなる。ハンスの入院中、アンナは彼の代わりに配達を引き受けたが、女手のこととて思うに任せない。暇がかかるという理由で馘になってしまう。その為に折角自動車の月賦の残金が払えなくなった。残金を払わないと、契約によって自動車は持って行かれてしまうのだ。アンナは百方奔走してみたが、金の才覚はつかない。最後の月賦支払日が来た。無情な集金人はアンナが泣いて頼むのを振り切って自動車を取り上げようとかかる。アンナが泣きわめく声を聞いて、アパートに住む人達は、みんな驚いて部屋から出て来る。そして事情を聞くと同情して、各自が少額の寄付金を、中庭に泣きくずれて居るアンナに投げてやった。この思いもかけない同情の義金のおかげで、アンナは大切な自動車を渡さないで済んだ。その知らせを病院で聞いたハンスは大悦びだった。そして彼の傷も思ったよりも早く癒ったのであった。ハンスが退院して最初の日曜日が来た。アパートの中庭には、花で美しく飾られた自動車がある。その運転台にはハンスがアンナと並んで座った。子供達の喝采裡に車が動き出す。軽く上がる土埃りに日光が降り注いだ。

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