極北の叫び

解説

「聖山」「マッターホン」と同じくルイス・トレンカー氏が主演した映画で「マッターホン」のヌンチオ・マラソンマ氏がクルト・J・ブラウン氏と合作で脚本を書き「マッターホン」のマリオ・ボンナルド氏の協力を得てマラソンマ氏が監督したもの。主役の他にエファ・フォン・ベルネ嬢、マックス・ホルスベール博士、ニコ・テュロフ氏等が助演している。(無声)

1929年製作/ドイツ
原題または英題:The Call of the North Der Ruf des Norden

ストーリー

北欧エンゲディンの天地はスキーの喚声にどよめいている。スキー競技で常に一二位を争っている男にペーター・ヘリングとスヴェンソンとがある。運命は彼等をして更に極地に於て一人の女性を中心に生死の争闘を導き来る。北極探険家ジョン・ウィントンは二年前に極地でその消息を絶った。その妻のジェーン・ウィントンが良人の踪跡をたずねて再び北極探険隊を組織しスキーの名手たりしペーターとスヴェンソンとが選まれてこれに参加することになった。碎氷船「ホッピー」号は北極圏に入り流氷帯より結氷帯に進んで根拠地を得た。ジェーンを船に残し、ペーター、スヴェンソンの一行は犬橇に乗じて氷上を北へ北へとジョンの跡を尋ねる。日が過ぎて暦は空しく引裂かれ、「ホッピー」号の無線電信は次のような消息を世界に伝えなければならなかった。「既に我々は結氷に鎖されてしまった。しかもジョン一行の消息は杳として不明なり」。その時二人は海冥の極地にジョンの遺品を発見する。目的はようやく達せられた。が、スヴェンソンは美しいジェーンを独占する心に馳られ一人ジョンの日記を懐ろにして根拠地に引返す。めざめて知ったペーターはスヴェンソンの後を追う。極地はあやめも分たむ大風雪である。残された船の人々はたった一人の女性ジェーンに野獣的な眼を光らせる。人々の邪悪な血が沸騰の頂点に達した時、自然の制裁は下って船も人も永遠の氷海に呑まれてゆく。そしてここから数十里の彼方スヴェンソンの背信に憤ったペーターが彼を狙撃しようとした時スヴェンソンは既に凍傷の犠牲となって倒れようとしていた。やがて風雪静まった後の神秘の極光の下ペーターの姿は遠く消えてゆくのである。

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