港町にて

解説

アルベルト・カヴェルキャンティ氏が監督した非商業主義映画で、台本も氏自らクロード・ヘイマン氏と共同して執筆したもの。出演者はジョルジュ・シャルリア氏、「女優ナナ(1927)」のカトリーヌ・エスラン嬢、「キイン」のナタリー・リセンコ嬢、「狼の奇蹟」のフィリップ・エリア氏、「ヴェルダン 歴史の幻想」のトミー・ブールデル氏等で、カメラはJ・E・ロジェ氏が担当した。(無声)

1928年製作/フランス
原題:En Rade

ストーリー

或る港町での出来事である。洗濯屋を営んでいる寡婦の一人息子のジャンは海が好きだった。彼は港を出て行く船を見送ると、不思議な海の誘惑を感じた。そして海の彼方の見知らぬ国への憧憬が胸に湧き起るのだった。彼は洗濯女達が騒がしく罵り合っている自分の家が堪らなく嫌だった。彼は或日波止場に立って出帆する船を眺めていた。それを同じように見送っている昔水夫をしていて怪我をして知的障害者になった男とジャンは知合いになった。ジャンは母に知られないように海の彼方へ行く為めの準備に取りかかっていた。しかし息子を愛し息子の将来のことを思い患っている母親は彼の秘密を発見した。ジャンは或日男に導かれて船大工達を顧客とする小さい料理店へ行った。その処には可哀想なアンナという女給がいて、無慈悲な女将に酷使され、荒くれ男達に怖わ怖わ給仕をしていた。しかしジャンの眼は彼女を安心させ頼りに思わせるような優しい光を持っていた。ジャンも可憐なアンナに心を惹かれた。二人は或日逢った。語り合った。ジャンはヴァルパライソ行きの二人分の切符を買ってアンナに示した。二人は自由の天地を夢みて語り合った。ジャンは不図アンナの髪の香を感じた。アンナは彼の眼の中に彼女は常々怖れていた情欲の閃めきを認めた。彼女の夢は崩れた。彼女はジャンを逐ひやって泣いた。ヴァルパライソ行きのヴァルディアラ号が出帆する日ジャンはアンナを待っていた。しかし彼女は来なかった。彼は家へ帰ってベッドに泣き伏した。母は息子の歎きを見守っていた。男は小舟で海へ出て行った。翌る日彼の死体は波打際に打寄せられて来た。

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