「詩人の愛」オルフェ(1950) jarinkochieさんの映画レビュー(感想・評価)
詩人の愛
コクトーは ドイツ占領下のパリと 自分の身に起きたことを、オルフェウス伝説に絡め 映画にしたようだ
死神、黒い高級車、冥界での査問委員会はナチスを連想させ (でも 車はロールスロイスなのだ! )
使い魔の様なバイク乗りは 暗殺者、親衛隊のイメージだろうか
冒頭で死んでしまう新進気鋭の詩人セジェストは
夭折の天才レイモン・ラディゲに、
死神に誘惑されてしまう詩人オルフェは
ラディゲ亡き後、衝撃のあまり阿片中毒になってしまった コクトーに重なる
詩人カフェでの疎外感、つけ狙う新聞記者、彼を告発する知人、押し寄せるファン、オルフェを殺してしまう文学青年達に コクトーの苦悩が見られる
そんな中、映像表現では 様々な工夫がされている
鏡が大きな役割を果たすが〈 鏡 × ジャン・マレー 〉の取り合わせに うっとり…
また それはマレーの美貌への自己陶酔に見えるが、詩人コクトーのおのれの才能への陶酔ではないだろうか
最後のオルフェと妻の抱擁は
死の誘惑から逃れたコクトーとマレーの喜びだろうし〈パリ開放の歓喜〉にも重なる
死神(カザレス)の涙は オルフェだけでなく、パリを手放す(ドイツの)悲しみも意味するのだろうか
色々なことが重なり マレーを手放さざるおえなくなっていったコクトーの悲しみでもあるのか
いずれにせよ、コクトーとマレーの運命的な結びつきを感じさせる作品だった
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