さらば白き氷壁

劇場公開日:

解説

一九六一年七月十二日アルプス最高峰モンブランの頂上にそびえる約八百メートルの巨大な岩壁で、仏・伊のパーティが遭難、七人のうち四人が死んだ。この事件の生き残りの一人ピエール・マゾーの証言をもとに十一年ぶりに再現されたノンフィクション・ドキュメンタリー。監督・撮影はロタール・ブランドラー、脚本はアキ・グライター、音楽はアンドレ・ポップとアンリ・ブーケ、編集はイレーネ・ブラザーが各々担当。出演はピエール・マゾー、ミラン・ドゥベック、ロルフ・イェーガー、エゴン・ウルムなど。

1972年製作/西ドイツ
原題または英題:Inferno An Mont Blanc
配給:東和
劇場公開日:1973年8月4日

ストーリー

アルプスの最高峰モンブランの名前は、世界のアルピニストにとって永遠のシンボルである。フランス側からは多くのアルピニストたちが頂上をきわめたが、イタリア側にそびえたつ八百メートルのフレネイ岩稜を越えて頂上をきわめた者はいなかった。フレネイ岩稜征服こそは各国アルピニストにとって悲願であった。 一九六一年七月七日。ピエール・マゾーをリーダーとするフランス隊四人はフレネイ岩稜めざして出発した。メンバーは、ロベール・ギューム(R・イェーガー)、ピエール・コールマン(M・ドゥベック)、アントワーヌ・ビエイユ(E・ウルム)の四人だった。 七月八日。早朝の薄明りの中をトリノ小屋に向う三人のイタリア隊がいた。ワルテル・ボナッティをリーダーにアンドレア・オジョーニ、ロベルト・ガリエーニ。同じ目的の二つのパーティはトリノ小屋で顔を合わせ、協力してフレネイ岩稜に挑む事になった。午前五時、小屋を出発。今日の天気は素晴らしかった。このまま続けばあさっては頂上だ。 七月九日。今日はイタリア隊が先頭。四分の三を突破、あと二百メートルの大きな岩一枚だけである。だが、その時吹雪が襲って来た。イタリア隊は岩棚に身を寄せたが、コールマンの補聴器に落雷。だが薬で意識だけは回復した。七人は天候の回復を待ったが吹雪は激しくなる一方だった。 七月十一日。夜が明けてみると、大量の雪のために壁も岩も判別がつかぬほど白く、凍りついていた。モンブランの頂上への道は完全にとさされたのだ。コールマンのその後の調子もよくない。一隊は急いで降りる事になった。雪の渦巻の中でビバーク。残った食糧を分けあう。眠ったら凍死してしまう。零下十度。全員くたくたに疲れていたが、コールマンとビエイユは特に悪い。事態は最悪だ。突風吹きすさぶ中で病人をかかえて必死の下降が始まった。あと一歩のところで挫折したショックに加えてあまりにも厳しい大自然の力。八時間にわたる下降。衣服とからだが濡れ、こごえきってくる。ぶきみな雪崩の音。日暮れまでにようやくフレネイ岩稜の下部にたどりついた。 七月十二日。さらに谷間には雪がつもった。ずぶ濡れで凍りついた一行は、新雪の上をひきずるような足どりで降りてゆく。最年少のビエイユは倒れたまま息をひき取った。死体を雪の上に残してただ進むのみ。この日の午後二時、六人は二つに別れた。ボナッティはコールマンを連れてガリエーニと二千メートル下のガンバ小屋へ急ぐ。エネルギッシュなマゾーは消耗しつくしたオジョーニとギョームの援助にあたりながら降りる。すでにオジョーニは前へ進む気力を失っていた。マゾーがその様子を見ているうちに、ギョームはザイルをほどいて姿を消した。一方、ボナッティはコールマンと必死の努力をふりしぼっていた。しかし、ガンバ小屋まであと三十分のところでコールマンも死んだ。ボナッティとガリエーニはガンバ小屋にたどりついた。救援隊はマゾーを発見した。だがギョームは凍死体となってクレバスで見つかった。オジョーニも死んだ。ベストをつくしたメンバーでありながら七人中四人も死んだ。何事もなかったようにモンブランの南壁、フレネイ岩稜は今日も山男を呼んでいる。

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スタッフ・キャスト

監督
脚本
アキ・グライター
撮影
ロータル・ブランドラー
音楽
アンドレ・ポップ
アンリ・ブーケ
編集
イレーネ・ブラザー
字幕監修
山崎剛太郎
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映画レビュー

5.0さらば白き氷壁

2019年9月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

モンブラン北壁フレネイ岩稜・登攀の記録再現でしたが、撮影登攀チームも犠牲者を出すなど本格的なものでした。テラスから足を放って眺める雲海のアルプスの夕日のきれいだったこと、そのあとのブリザードの登攀と下降、そして事故。音楽も二つの主題Mがしんみり、でも緋想ではない、
気象観測や、ヘリでのルート図作成が、登山とはどんな行為なのか本当に心にしみる映画です。
最後に往年のアーノルド・カシンが救助隊を率いて氷河を登ってくる姿がさりげなく、これまで見た中で最高の山岳映画です。

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Hidehiro