早春のレビュー・感想・評価
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ノーブル/コケティッシュ、共同体/個人(女)
青年が懸想じる女はコケティッシュ。媚薬を嗅いだかのように女を追い、最後は死に至らしめてロマンが完結する。ドイツ的ロマン主義=理想を共同体に投影ならぬフランス的ロマン主義=理想を個人(女)に投影だ。
1970年製作のイエジー・スコリモフスキ監督作品。 舞台はイギリス...
1970年製作のイエジー・スコリモフスキ監督作品。
舞台はイギリスですが、イギリス・西ドイツ合作映画(まだ東西ドイツに分かれていた頃ですね)。
主役ふたり以外は西ドイツの俳優で、プールのシーン以外のほとんどを西ドイツで撮影しました(特典の監督インタビューより)。
英国ロンドンで暮らす15歳の少年マイク(ジョン・モルダー=ブラウン)。
自転車を駆って向かった先は、公衆プール&浴場施設。
学校を中退したマイク、そこで働くことにしたのだ。
年上の女性従業員スーザン(ジェーン・アッシャー)に施設内を案内され、接客要領について教えられるが、マイクはひとめでスーザンに恋してしまう・・・
といったところからはじまる物語で、色白美少年マイクの「早すぎる春」の映画。
あまりの美少年ぶりに、マイクは中年女性の常連客(ダイアナ・ドース)から個室浴場で誘惑されるが這う這うの体で逃げ出す。
引き連れてきた女生徒たちにボディタッチしながらも、スーザンに色目を使う体育教師(カール・ミヒャエル・フォーグラー)に嫌悪するも、スーザンが体育教師を個室浴場へ引き込むのを目撃してしまう・・・
と展開する前半は、うーむ、あまり面白くない。
が、俄然面白くなるのは、スーザンが婚約者の青年(クリストファー・サンドフォード)と出かけるのを尾行するあたりから。
スーザンと婚約者は、60年代末から盛んに作られた成人向け映画(大人のための性教育を謳って女性の裸を登場させ、観客はそれを愉しんだり、滑稽な性描写を笑ったりする)を観に映画館へ。
マイクも年齢を偽ってもぐりこむが、スーザンの婚約者に見つかり、痴漢騒動へと発展。
その後も、いかがわしい界隈をうろつき、脚にギプスを着けた娼婦の部屋へ迷い込んでしまったり・・・
このあたりの描写、いわゆる「不思議の国のアリス」と同じ趣向だけれど、街の猥雑さがマイク少年の心中のなんともいえない燃え滾るものを表現していて興味深い。
その後いろいろあるが、終盤は、雪野原でマイクと取っ組み合いになったスーザンの薬指から、婚約指輪のダイヤモンドが外れて紛失。
勤め先のプール(休日のため水が抜かれている)へ持って行って、雪を融かして見つけ出そうとし、悲劇が訪れる・・・
あらすじだけ書き出すとなんともいえない、どちらかといえば、すっとこどっこいなストーリーなのだけれど、登場人物の生々しさ、背景の猥雑さ加減が、青春の一歩手前の時期のこらえきれない欲望のようなものを感じさせます。
全編を彩る音楽は、キャット・スティーヴンス(英国)とプログレッシブロックバンドのカン(The CAN 西ドイツ)。
70年製作の映画だから、もう50年も前の映画だが、早春の時代は変わったのだろうか。
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