劇場公開日 2024年3月15日

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「ひたすらコッテリ」MONTEREY POP モンタレー・ポップ La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)

ひたすらコッテリ

2024年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 1960年代のアメリカでのロック・フェスと言えばウッドストックが有名なのですが、本作は、その1年前の1967年にカリフォルニア州モンタレーで開催された「国際ポップフェスティバル」のステージを記録したドキュメンタリーです。無駄なナレーションやインタビューはなく、登壇するバンドやシンガーの音楽をタップリ堪能できます。

 何と言っても、その顔ぶれに度肝を抜かれるのです。まず、本フェスティバル広告の為に作られたと言う(知らなかった!)スコット・マッケンジーの「花のサンフランシスコ」で幕を開けます。これは軽やかな曲なのに、このメロディを聴くといつも何だか切なく悲しくなるんですよね。そして、パパス&ママスの「夢のカリフォルニア」、更に予想もしなかったサイモン&ガーファンクルの「59番街の歌」。今も彼らのアルバムを聴く僕には堪えられない一瞬です。そして、ジャニス・ジョプリンの「ボール・アンド・チェイン」のシャウトに完全にノック・アウト。しかし、息つく隙を与えられず the Animals, the WHO と続き、更にオーティス・レディングの「愛しすぎて」で観ている我々もコテコテ汗まみれになります。そして、この日のステージ以降、彼の代名詞にもなったジミヘンのギター着火・ぶっ壊しの歴史的ステージを眼前に観る事になるのです。

 この映画のトリを誰で締めるのかなと思っていたら、登場したのはラヴィ・シャンカールでした。本作中では彼の演奏場面が飛び抜けて長かったのですが、いやぁ、腰が抜ける程の力強い演奏でした。彼のシタールとタブラ(インドのパーカッション)奏者との高速インタープレイが凄まじく息が止まりそうでした。観客が徐々に熱狂していく様も手に取る様に感じられます。

 等々、本作はこのステージだけで時代の空気が満喫できるのですが、もう一つの特徴は、この日の客席の人々をも克明に記録している点です。ファッションやヘアスタイル、手にしている物や売っている物に、これ以降の若者文化の胎動が感じられるのです。

 こんな凄い映画が、劇場日本初公開であったなんて。いやぁ、いいもの見せて貰いました。

La Strada