「やり切ったことで得られた境地」黄金 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
やり切ったことで得られた境地
金鉱採掘はきつくてリスクも高いが、上手くいくとギャンブルやゲームのように夢中になるものなのだろう。だが、金鉱採掘を通じて、欲望に取り憑かれた人間の醜さを目の当たりにしたり、人と人との絆を経験したりする。手垢のついた表現だが、その経験を通じて金よりも大切なことに気づくことができた。人生に納得感をもたらすのは金では無いと。それは想像だけでは達し得ない境地だと思う。欲望に突き動かされて実際に金鉱採掘をやり切ったことで得られた境地だと言える。
やってみて腹の底から分かることがある。これは金鉱採掘に限らず、あらゆる分野において言える。ウォルター・ヒューストン演じる老人のハワードが「若かったら自分も(仲間を裏切って金を盗むことを)やっていた」と言っていたが、彼もまた散々金鉱採掘を経験してそういう境地に達したのだと思う。
ストーリーはスリリングで所々笑えるシーンもあり、面白い映画だった。特に、連れの比較的若い二人が金鉱へ向かう途中疲れ果ててぐったりしている中、老人のハワードが元気に豆を食べて喧しくハーモニカを吹くシーンが一番笑った。老人なのに元気過ぎる。また、後味の悪い映画なのかと思ったらそうではなく、気持ちの良い映画だった。
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