透明人間(1933)のレビュー・感想・評価
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【H・G・ウェルズのSF小説を映像化した記念碑的作品。その後、同名映画や同テーマ映画を多数輩出した作品でもある。そして、世界征服を企んだ透明人間の最期は哀しいのである。】
ー 私にとって”透明人間”の映画と言えば、リー・ワネル監督の同名作や、ポール・ヴァーホーベン御大の「インビジブル」である。
だが、それらの源流が今作品である事や、”透明人間”と言うSF概念を一般的にしたという意味では記念碑的作品であると思う。ー
■野心に燃える若き科学者・グリフィンは同僚のケンプ博士とともに、人体を透明にする新薬モノケインを開発する。
しかし、薬の副作用によって精神に異常を来した彼は、世界征服を唱え、凶暴な殺人鬼へと変貌してしまう。
殺人や暴行や残虐な行為を繰り返すグリフィンは、モンスターとして町の人々に追い詰められていく。
◆感想
・今から、90年前の作品ながら観ていて面白く、怖く、切ない映画である。それは、グリフィン博士がフローラという恋人が居ながら、新薬モノケインの副作用で精神に異常を来し共謀な人間になって行く様である。
・グリフィン博士が透明人間になる様は、VFXが使い放題の今から見れば稚拙に見えるかもしれないが、当時としては画期的だった事であろう。
でなければ、今作後多数の透明人間の映画は作られなかったのではないか。
<列車のポイントを切り替え、崖下に落とすシーンや、警察に秘密を打ち明けたケンプ博士を拘束し車ごと崖下に落とすシーンなども、どう見ても模型であるがそこは追求しない。
今作の意義は先に述べたように”透明人間”と言うSF概念を一般的にした事である。
そして、透明人間の最期は哀しい。恋人に見られながらベッドの上で死を迎えた彼は、その美しい死に顔を徐々に見せるのであるから・・。>
日本の特撮を語るなら、「キングコング」と本作「透明人間」は必ず観ておかなければならないと思います
1933年、ユニバーサル映画、白黒トーキー作品
ご存知H・G・ウェルズの原作
オタクなら小学生の内に図書室で読んでいるはず
内容は少々翻案されています
H・G・ウェルズの超有名作品は当然映画になっています
超人気作品は何度も映画化されていますが最初の映画化はこうなります
宇宙戦争 1953年
タイムマシン 1960年
そして本作、透明人間 1933年
特に本作は人気で何度も繰り返し映画化され、モチーフ作品は山ほどあります
日本でも撮られています
その中で本作が映画「透明人間」のオリジナルになります
ちなみに次の作品はジュール・ヴェルヌです
月世界旅行
地底探検
海底二万里
八十日間世界一周
間違いやすいですので念の為
こちらも全部映画化されていますね
本作は1933年11月公開、日本では翌1934年3月公開
「キングコング」は1933年3月公開、日本は同年9月公開です
つまり本作は米国では「キングコング」に遅れること8ヶ月、日本では4ヵ月と、少しだけ遅れての公開だったわけです
円谷英二は1901年生まれ
1933年当時32歳、日活太秦撮影所に引き抜かれて1年目でした
特殊撮影技術の研究を早くからしていたもののまだ特撮映画に取り組む前のころです
彼はこの「キングコング」に衝撃を受け、独自にフィルムを取り寄せ一コマづつ入念に分析研究したそうです
おそらく本作の「透明人間」にも同様の衝撃を受けたはずです
一体どうやって撮ったのだろうか?
具体的にどうやればこのような映像を撮れるのだろうか?
理屈は類推できても、それを実現する機材も技術もまだ日本には存在しなかったのです
それが円谷英二が特撮の父、特撮の神様になっていく直接のきっかけだったのだと思います
つまり「キングコング」と並んで、本作は日本の特撮の原点と言える作品です
「市民ケーン」のローアングルなどを観ても、どこがどうすごいのか説明を受けないと後生の私達には当たり前過ぎてなにも驚かないのと同じように、本作の特撮をみてもチャチイとしか見えないかも知れません
しかし、当時の円谷英二は本作の特撮に衝撃を受けたのです
その証拠に、1949年に「透明人間現る」、1954年には「透明人間」と2本も透明人間ものの撮影を担当しているのです
日本の特撮を語るなら、「キングコング」と本作「透明人間」は必ず観ておかなければならないと思います
若かりし円谷英二が受けた衝撃を追体験すべきだと思います
キングコングがゴジラに発展したように、透明人間はガス人間第一号などの怪人作品に発展し、最終的にはウルトラシリーズに統合されていったのです
日本の特撮の出発点はここにあります
円谷英二の「ハワイ・マレー沖海戦」の特撮技術はいきなり生まれたのではありません
本作「透明人間」や「キングコング」で受けた衝撃に発奮して日夜研究を重ねて日本の特撮技術の土台が作られて行ったのです
蛇足
宿屋のおかみさん役の女優の過剰な演技が素晴らしい
宮崎アニメをみているかのような動きと表情を見せてくれます
お見逃しなく
モノケインの副作用にご注意下さい
Amazon Prime Videoで鑑賞(字幕)。
原作は未読。
かなりクォリティーの高い特撮が目を引きました。包帯をほどくとそこには何も無いと云うお馴染みのシチュエーションの原点を体感。合成にムラがあるのは当時の技術を考慮し仕方無いとしても、上手くつくられているなと思いました。
言わずと知れた「ユニバーサル・ホラー」の名作であり、これぞまさにクラシックだな、と…。最近リブート版が製作され日本でも近日公開されるとのこと。大変楽しみです。
※修正(2024/05/28)
役者の一人芝居合戦
欽ちゃんの仮装大賞なんかで使われた透明人間ネタ。あれに近いものがあった。ドアがひとりでに開き、椅子がへこみ、タバコが宙に浮く。そんな単純な仕掛けで透明人間は作り上げることができるのだ。しかし、この1933年、トーキーになったばかりの映画でここまで演じるのが凄いと思えるほど役者の一人芝居が上手いのだ。
何のために透明人間になろうとするのか?普通なら銭湯の女風呂を覗くためじゃね?と男のスケベ心はここが原点。しかし、ほとんどのインビジブルものは兵器に利用したり、スパイ活動に利用したりするのが常。ただし、この主人公は自分で「世界征服する!」などとほざいているのだ。軍に薬を売れば最強の透明軍隊も生まれるし、巨額の富をもたらすのだ。
ストーリーは、ハリー・ポッターやドラえもんの透明マントとかLOTRのリングみたいにファンタジーじゃなく、殺戮を繰り返す凶悪人間となってしまう。崖から落とされた人たちの演技やジャイアントスウィングされる警官も見どころの一つ。もう、人を殺すしか興味ないんか!と、粗暴さに呆れ果ててしまう作品でもありました。
Money money money money money! サングラスが奇抜!
きっと当時の人には衝撃だったに違いない「透明人間」。今観るとこの人はいったい何を考えているのやら?とツッコミ所の多い作品でした。いや、この手の作品にツッコミは野暮かもしれないですけどね。
しかし、透明になっただけで「世界征服できる!」はないでしょう。具体的な説明がなかったので、いったいどうやってやるつもりだったのやら?せいぜい「こっそり殺人を犯す」が関の山で世界征服は風呂敷を広げすぎです。
ただ銀行から金を盗んで「金じゃ、金じゃぁ」っとバラまいてたのは楽しそうでした。あれ、ちょっとやってみたいです。
古今東西色んな能力が映画で描かれてきましたが、透明になるってのは正直あまり羨ましくなあなぁと思った次第でした。
哀しい結末
85年前にこの映画を撮ったということがすごい。ストーリーは単純明快でオーソドックスな透明人間の物語。ケビンベーコン主演の「インビジブル」と比べてみるのも面白いかもしれない。
殺人や強盗を犯す犯罪者のはずの透明人間(ジャック・グリフィン)だが、中身は人間であり、恋人がいて、彼女のために立派な男になりたかったと吐露するシーンが切なく心に残った。姿なき恐ろしい怪物でも一人の男であり、愛されたいと願う人間的な一面も持っていた。恐怖よりも哀れみを感じさせるラスト。
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