「角砂糖のダイス」翼に賭ける命 sugar breadさんの映画レビュー(感想・評価)
角砂糖のダイス
ダグラス・サーク作品の中でもやや異質な感じ、死や妄執が隣り合わせにあるような独特の雰囲気は何だろうと感じたのですが、ウィリアム・フォークナー原作だったのですね。1930年代前半の大恐慌下の鬱屈した空気感が映画のタッチにとても合っていたと思います。
何かに憑かれた人物ばかりが登場します。
飛行機と飛行レースに取り憑かれた1次大戦の英雄ロジャー。常に死と隣り合わせだった戦争のトラウマなのか、今はレース出たさに妻を性献上してしまうろくでなしです。これをアンタッチャブルの正義漢ロバート・スタックが演じる皮肉。
妻ラヴィーン役のドロシー・マローンがめちゃくちゃコケティッシュでよいです。「氷の微笑」でのシャロン・ストーンの友人役ぐらいしか知りませんでしたが、愛に飢え揺れ動く女心を上手く表現していました。
メカニック役のジャック・カーソン。ラヴィーンが好きなのに、誠実さから奪うことができない根性なしを名脇役が安定の演技。
この三人に魅せられる記者バーク(サーク作品のスター ロック・ハドソン)が絡み、愛憎渦巻く独特の雰囲気を醸成していきます。
撮影も見事。夜ラヴィーンとバークの室内でのシーン。タバコに火をつける瞬間や酒を酌み交わし、長椅子に寝そべって対話する際のコントラストがとても絵になっていました。
従来のハリウッド作品とは一線を画す良作です。
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